20話 積み重ねてきた狂気。
20話 積み重ねてきた狂気。
センは……センキラーは、歯を強く噛みしめる。
逃げるという選択肢を、意志の力で叩き潰す。
「全ての運命を殺して、パーフェクトなトゥルーエンドに辿り着く。――ミッション了解」
丁寧に、諦めることを、諦める。
センの目が変わる。
迷いを切り捨てた、一本の直線のような視線が、まっすぐにバーチャを射抜く。
「……行くぞ。アマテラス・バーチャ・センエース、殺してやる」
バーチャは冷ややかに応じた。
「多少はマシになったようだが……それでも存在値は1000京ちょっと。私には届かない」
センキラーは、口角をわずかに上げた。
「それはどうかなぁ……」
両手を前に突き出す。
指先から、力が集束していくのがわかった。
「これならどうだ。……くらえ。今日まで俺が……俺たちが積み重ねてきた狂気を」
センキラーは、肺の奥ではなく、さらに深い――腹の底、その最奥にまで意識を沈めた。
理屈も、恐怖も、後悔も、すべてを一度呑み込み、強引に圧縮する。
血流が一気に熱を帯び、筋肉が限界を訴える。
存在値そのものが、内側から反転し、裏返るような異様な感覚。
――命の華、萌ゆる。
覚悟と狂気、そしてこれまで積み重ねてきた全ての履歴を一点に束ね、センキラーは咆哮した。
「ニャルドライブ・オメガバスティオン!!!」
その名が宣言された瞬間、特殊カスタムされたオメガバスティオンが完全起動する。
それは単なるエネルギーの解放ではなかった。
因果、結合、状態遷移――それらを成立させていた『前提条件』そのものが、力ずくで書き換えられる。
空間が軋む。
音ではない。
概念そのものが、悲鳴を上げた。
一瞬、視界が歪み、世界の輪郭が二重に重なる。
次の瞬間、バーチャの存在が、内側から弾き出されるように崩れた。
破裂ではない。
分解でもない。
――分離。
本来ひとつであるはずの存在が、当然のように二つへと引き剥がされる。
『バーチャ』。
そして、『センテラス』。
互いの引力を失った二つの存在が、空間に放り出されるように宙に浮かび上がった。
融合という状態そのものを否定する暴挙。
因果律と存在定義を踏みにじる、純然たるチート技。
――ニャルドライブ・オメガバスティオン。
バーチャは瞬時に状況を把握した。
理解したからこそ、反射的に舌打ちが漏れる。
「ちっ!!!」
すぐさま、バーチャはテラスへと手を伸ばす。
再融合を求めて。
ただ、解除されただけ。
もう一度奪えばいいだけのこと!
だが――遅かった。
「アマルガメーション!!!」
センキラーの叫びが、重なる。




