18話 てへぺろ。
18話 てへぺろ。
(あとは、パパ上があいつを殺すだけです)
朝日の声は静かで、感情の起伏をほとんど感じさせない。
結果だけを見据え、過程をすでに切り捨てた者の声音だった。
(いや、もう、ここまできたら、お前が全部やったら? お前が出てきてからというもの、俺、ずっと蚊帳の外でさ。いまだに、何が何だか、正直よく分かってねぇんだけど……)
(僕じゃ、バーチャには勝てませんよ。僕はあくまでも、裏方です。『世界を救うヒーロー』はパパ上だけの仕事……パパ上だけの特等席です)
朝日は自分の立ち位置を譲らない。
黙して表に立たず、歴史に名も刻まず、センエースの勝利のためだけに身を粉にする――それが自分だと、最初から決め切っていた。
(一個だけ分かったことがある。お前が頑なに、俺が嫌がる『パパ上呼び』をするのは、蝉原が根っこにあるからか。昔から不思議だったんだよ。めちゃくちゃ礼儀正しくて、俺に忠義を尽くすくせに、ちょいちょい、俺が嫌がることをしてきただろ。娘に俺のペンネームつけたりよぉ……)
(そこに関しては、プライマル兵器のコアとして運用するために必要だった、という理由もありますが……まあ、はい。嫌がらせでもありますね。蝉原の因子が強いので、どうしても、パパ上にはイタズラをしてしまうのです。てへぺろ)
朝日はニコニコと笑っていた。
戦場に立つ者の笑みではない。
だが、その無垢な表情の奥には、数え切れない試行と選別を経てなお残った、底知れぬ計算が潜んでいた。
そして、ふと思い出したように、朝日は、
(ああ、そうそう。最後に、一番大事なこれを……)
そう言いながら、センキラーの『中』で、アイテムボックスに手を差し入れ、指先でつまめるほどの小さなチップを取り出した。
金属とも結晶ともつかないそれは、淡い月光を閉じ込めたかのように、静かに輝いている。
(それは?)
(ゼラグルルオン最大最高の秘宝……トリデサイゴが使用していた携帯ドラゴン『ルナ』のコアチップです)
(……)
(トリデサイゴの因子の大半は、このチップに込められています。怨念も、執念も、愛も……)
(へぇ)
(これまでは、『チップの性能』の『大部分』が封印されておりましたが……『ハルス・レイアード・セファイルメトスの覚醒と回収』がトリガーとなり、制限なしで運用できるようになりました)
(なるほど、つまり俺は脱げばいいんだな?)
(その通りでございます、パパ上)
そこで、センキラーは一歩前に出た。
「おいで、ルナ」




