7話 奴隷ランク。
7話 奴隷ランク。
どうすればいいのか分からない。
考えれば考えるほど、選択肢は崩れ落ちていく。
それでも。
それでも、このまま黙って見ていることだけは、できなかった。
何をすればいいのかは分からない。
正解も、希望も、すでに砕け散っている。
それでも――
何もせずに、奪われる瞬間を見届けることだけは、できなかった。
――そんな絶望の底で、
『ドレイとしてのランクを下げますか?』
確かに、その声が届いた。
幻聴ではない。
錯乱でも、錯覚でもない。
前触れもなく、唐突に、
冷たく、整いすぎた声音が、脳の内側に直接触れてくる。
センにかけられた、カースジェイルの警告。
一度、経験している。
だから、ハルスは驚かなかった。
ただ――
胸の奥の、ずっと動かなくなっていた場所が、
針で突かれたように、かすかに疼いた。
「……下げたらどうなるってんだ」
声は、乾いていた。
怒りでも、恐怖でもない。
ただ、生き延びたい者の、最後の問いだった。
『ドレイランクを下げると、主人の命が最優先となります』
「いまもそうだろ……」
喉が鳴る。
言葉を吐くたび、肺が痛む。
「……何が変わるかを、聞いている」
『魂魄の深層に刻まれる優先順位の序列1位。それは、すべてにおいて優先される命のメインクラス。つまりは、コスモゾーンの法則、第一条第一項第一号の規定。決して、何モノにも縛られない、原初の義務と権利』
「それも前に聞いたぁああ!」
声が割れる。
理屈が欲しいわけじゃない。
「何が変わると聞いているんだ!!!!!」
叫びは、怒声ではなかった。
助けを求める音だった。
『ゆえに、ドレイでありながら、どんな自由も許されるようになります。――それが、主人を守るための行動であるならば――』
「それも聞いただろうがぁああああああ!!」
膝が震える。
立っていることすら、限界だった。
「あのクソガキを回収できるのであれば、何でもしてやる!!」
薄氷の誇りが、音を立てて崩れる。
傷だらけのガラスみたいな矜持が、粉々に砕ける。
――そして、再構築されていく。
「だからぁああああああ!!」
もう、取り繕う余裕はなかった。
ただ、大事なものを取り戻すためなら――
自分がどうなっても構わないと、心の全部が叫んでいる。
――だから、
『愛して、愛されて――』
「あぁああああ?!」
理解できない。
なにも。
何一つ。
命。
心。
分からない。
分からないよ。
でも、きっと、
だからね――
『――自由になるの』
次の瞬間。
バリィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!
乾いた破砕音が、
世界の内側で響いた。




