4話 根幹にあるもの。
4話 根幹にあるもの。
触れただけで分かる。
抵抗も反抗も成立しない、絶対的な力の差。
セイラは気絶しているようだが、
苦しみだけは確かに感じているらしく、喉の奥から小さく、掠れたうめき声が漏れていた。
その光景を見た瞬間、
ハルスの眉間に、深いしわが刻まれる。
「ハルス……自分の腕を落とすか、セイラの腕を落とすか……どっちか選べ」
「……なんだ、それ……何の意味があるんだ?」
「意味はない。貴様の態度にイラついたので、嫌がらせをしているだけだ」
「神様みたいな力をもっているくせに、器のちっちゃい野郎だな。俺みたいな羽虫の言うことに一々ピキんなよ」
その瞬間、
バーチャは、セイラの右腕を乱暴に引きちぎった。
肉が裂け、骨が砕ける音が、乾いた残響となってホールに広がる。
意識はないものの、痛覚だけは確かに伝わっているらしく、
「ぁああああああああああああああああ!!」
甲高い悲鳴が、空間を引き裂いた。
「……わかったぁ!! 謝罪する!」
ハルスは、歯をギリっと噛みしめる。
視線を逸らさず、震えも抑えたまま、
自分の右腕を、ブチィと豪快に引きちぎる。
「こ……これでいいか?」
激痛が走る。
神経が悲鳴を上げる。
だが、顔には出さない。
脂汗が額を伝うだけで、
声は、意地でも崩さない。
「セイラに回復魔法をかけろ。……かけてください、お願いします」
ハルスの声は掠れていた。
命乞いに等しい言葉を選びながらも、視線だけはセイラから逸らさない。
床に落ちた血の気配が、まだ消えきらずに残っている。
「清涼な態度だ。すがすがしい」
軽口のように言い捨てると、バーチャは片手を掲げた。
展開された魔法陣は淡く脈動し、空気が澄んだ音を立てて震える。
次の瞬間、柔らかな光がセイラの失われた腕を包み込み、骨と肉が時間を巻き戻すように整っていく。
血は止まり、裂け目は消え、指先まで完全に戻った。
その光だけが、歪んだ交渉の終わりを、静かに照らしていた。
「それでは本当の交渉といこう。私はすでに、セイラの中にあったウラヨシのシステムを抜き出して、裏介に統合させている。だから、もう、この外殻は必要ない。貴様と同じで、中身のないヌケガラ……しかし、まあ、性行為ぐらいはできるだろう。欲しいならくれてやるぞ。どうする?」
説明は淡々としていた。
手術報告のような冷静さが、かえって内容の残酷さを際立たせる。
「どうするって…………どうしろっていうんですか? セイラを望めば……満足なんですか?」




