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87話 光り方は知っている。


 87話 光り方は知っている。


「……立ったからなんだってんだ。俺を殺せるか? 殺しつくせるか? できないだろ? 『立ちましたぁ』で終わりだろ? じゃあ、意味ねぇだろ? 『立ったねぇ、偉いねぇ』とでも言ってほしいのか? そうじゃねぇだろ? マジで意味ねぇんだよ。どうせ勝てねぇんだから、もう寝てろ」


 これは、命令というより懇願だった。

 ミシャの対応だけでも大変なので、『ちょっと、今回は勘弁してくれませんか』というお願いだった。


「ほんと、もう、いいかげんに……ん?」


 どうやら、P型センエース1号の不運は、まだ終わっていないようで、


 いまだ動けずにいる九華の面々のうち、

 唯一、神をよく知るパメラノが、


「どうせ勝てないから……だから、寝ていろと言われて……黙って寝ている者を……私は……ゼノリカに属する者だとは……認めん!」


 ギリギリと奥歯をかみしめて、必死に抵抗しようとしている。


「あの地獄の底で……誰よりも傷ついて、誰よりも苦しんで……なのに、立ちあがってくれた王の背中……ボロボロで、ズタズタで……なのに、心底頼もしかった、果てなく尊き神の背中を! 私だって! 鮮明に覚えておる!!」


 その抵抗は、形になってきていた。

 ビシビシと、見えない鎖にヒビが入る音が、P型センエース1号の耳には聞こえた。


(ほんと、ふざけるなよ……まさか、お前らまで……)


 不安は的中する。

 パメラノは、ついに立ちあがった。

 フラつきながら、それでも、自分の足で、そこに立つ。


 その横で、

 あの日、神に触れたバロールが、


「少しだけ……分かった気がする……これが絶望……どうしようもない巨悪を前に……ただ無様で、ただ惨めで……」


 砕けそうになるほど奥歯をかみしめて、


「痛くて、暗くて、重くて……何も見えなくて……ぁあ、覚悟が足りていなかった……理解が足りていなかった。私は、何も分かっていなかった……私は……私はぁああ!! うぁあああああああああああああ!!」



 心の熱を原動力にして立ちあがる。

 自分に対する憤怒と、心に神を抱いているという自負が、バロールを動かした。

 バロールの叫びに呼応して、


 九華の面々が、次々に立ち上がる。

 誰の目にも、光が宿っている。

 絶望を前に、だからこそ強く輝く。



 ここに、カスは一人もいない。

 誰もが、ひたすらに積んできた者たち。

 わずかも弛まず、必死に積み上げてきた者達。

 センエースの意思を継ぐという、何より重たい覚悟を決めた者達。



 つまりは、光り方を知っている者達。



 センエースの意思を正しく継いだ『ミシャンド/ラ』という光を背負い、

 どうしようもない巨悪という絶望を前に、

 だから!


 ――バロールとマリスとサトロワスが、



「「「私はヒーローじゃない」」」



 ――テリーヌとカティが、



「「それでも、」」



 ――アルキントゥとパメラノが、



「「叫び続ける勇気を……」」



 吐きだした水素イオンが世界に溶けていく。

 空は少し濁った青で、雲は少し銀で、




「「「「「「「ぶっ壊れて、歪んで、腐って、けれど、わずかに……でも確実に残っている、この想いのカケラを! 集めて! 最後の最後まで! 抗ってやる!!」」」」」」




 目の前に全部を並べて、揃えて、

 そして、だから、

 九華の者達は、叫ぶ。






「「「「「「「ヒーロー見参!!!」」」」」」」






 結集する。

 覚悟と想いの結晶。

 理解が、現実に届いて、

 心魄のかたちが変わっていく。



 パァァァっと、何かが開く音が、

 確かに聞こえた!



 命の弱さを飲み込んで、

 絶望を糧にして、

 ならった想いが、結合して、収束する。



 そして、ついに花開く!!




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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
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