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83話 当たり前のように。


 83話 当たり前のように。



「こんだけ色々を注いだ異次元砲を、ここまで簡単に受け止められて、今、俺は、猛烈にショックを受けている」



「うぐぐぐ……うぐぐぐぐぐぐぐ!」



「……だが、さすがに、もう、そろそろ、この茶番も終わりそうだな。いやぁ、本当に鬱陶しかったよ、ミシャンド/ラ」


「うぐ……ぬぅう!」


 P型センエース1号の異次元砲を、己の異次元砲で受け止める事で、どうにか必死に耐えているミシャ。

 気を抜けば、そのまま、影すら残らず、オーラの渦に飲み込まれてしまうだろう。

 そんな中で、

 ミシャは、

 想いを叫ぶ!


 『P型センエース1号の呪縛ごときで動けなくなっている者達』に向けて、


「私の声が! 聞こえているか!」


 心の奥から湧き出る言葉を投げかける!


「立ちあがり方を忘れたとは言わさない! 『諦める』という弱さの忘れ方は、誰よりも知っているはずだ! もし、まだ『本当には理解できていなかった』というのなら、ここで、きちんと、心に刻め! これほどの絶望的状況下でも! 当たり前のように勇気を叫ぶ! それが! この上なく尊き神の意思を……セン様の意思を継ぐと言うことだ!!」



 だんだんと押し負けてきているミシャの異次元砲。

 あとちょっとで飲み込まれてしまう。

 ――そんな絶望の中でも、ミシャの目は、わずかも光を失っていない!




「苦しくて、辛くて、暗くて、恐くて! だから、もう一歩も動けなくて! そんな時! たった一人! 最後まで、私達の前に立ってくれていた王! 『助けてくれ』って悲鳴を! 『もう無理だ』って慟哭どうこくを! 全部、まとめて、引き受けてくれた神の王!」


 ミシャの魂魄の最奥で、『センエース』が強く輝く。


「誰もが明日を諦めて! 終わりのない暗闇に沈みそうになって! そんな時、誰よりもボロボロになって! 誰よりも前に立って! だから、当然、誰よりも苦しくて、辛くて、暗くて、恐いはずなのに! それでも! 歯を食いしばって立ちあがってくれた、大きな背中! その強き意志を! 『その尊き想い』を『継承する』という事の意味を!! 思い出せぇええええええええ!」




 そんなミシャに、P型センエース1号は言う。


「はっ……『ただ誰よりも現実が見えていないバカ』ってだけのくせに、ずいぶんと、上から偉そうな事をほざくじゃねぇか。お前みたいな『勘違い女』が俺は大嫌いだ」


「貴様に好かれたいなどと思っていない! ミシャは、セン様が愛してくれれば、それだけでいい!」


「お前の意見なんか聞いてねぇよ。『お前みたいな勘違い女は嫌いだ』と言っているだけだ。ほんとうに、ただ、それだけの話」


 そこで、P型センエース1号は、黒くニっと笑い、


「お前がいくらハッパをかけたところで、あいつらは動けない。これは、ほとんど算数の話。3より2は小さい。2は1よりも大きい。その程度の話でしかないんだ。あいつらじゃ、俺の呪縛には抗えない。至極、単純な話」


 言ってから、さらに注ぎ込む魔力を増やす。

 もはや、ミシャでは耐えられない。

 飲み込まれるしかない。

 そんな『臨界点』に達した。


 その事実を、ミシャも理解した。

 肉体が、心が、魂が、自分の終わりを感じ取った。


 キチンと理解している。

 殻は『もう無理だ』と嘆いている。

 心も折れかけて、

 魂が潰れかけて、


 ――なのに、

 まだ、ミシャの『命』が、勇気を叫び続ける!



「これからもゼノリカを名乗る気があるのなら! 無様に寝転んでいないで立ち上がれ! 希望が必要だというのなら! この私が! 貴様らの希望になってやる! 私はいつだって、ここにいる!」



 いつまでも、最後まで、

 どこまでも、とことん、


 ミシャは、己の『全部』に抗い続けた。

 別に、ミシャは、精神力がハンパないというワケではない。

 ただの弱い命。

 たまたま、異常な能力を持って産まれ、狂ったような業を背負わされたという、

 ただ、それだけの小さな小さな命。

 だから、

 『これ』は、

 『特別な性質』なんかじゃない。

 『心が鈍感』なわけでもない。


 これは、

 ただの――






「ヒーロー見参!!」






 絶対の終焉を目の前にして、

 それでもミシャは叫んだ。

 想いは膨れ上がり、

 ミシャの器から溢れた。


 そして、積み重ねてきたすべてに注がれていく。

 足りなかったピースは埋まった。

 膨れ上がる!

 ミシャが積んできた全てが暴走する!

 だから!

 ミシャは!




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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
[一言]  『これ』は、  『特別な性質』なんかじゃない。  『心が鈍感』なわけでもない。  これは、  ただの―― センへの愛?
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