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5話 理論上最高の召喚

 ※


「……ひゃひゃひゃ、さてどんな魔物じゃ? 種族はエンシェントドラゴンか? 覇鬼か? って……はぁ? 人間? なんじゃい、失敗じゃ。くそが」



 ラムドはため息をつきながら、背後にある骨のイスに腰をかけた。



 召喚された人間が、「もういい! 異世界~~」などと、なんだか訳のわからんことを叫んでいるが、そんなことはどうでもいい。


 虫けらの叫びなど無視、無視。



 ラムドは、机の上にある本をパラっとめくる。


「何がイカンかったんじゃろう……間違いなく、理論上最高の召喚術式だったはず……」

 頭をぽりぽりとかきながら、

「パールドラゴンの魔眼が腐っとったんじゃろうか……それとも、ハイエルフの羽が足りんかった? ……んー」



 自分の世界に入り込んで唸っているラムド。




 そんな彼を、召喚された人間――『せん』は睨みつけていた。


(……召喚されたのはなんとなくわかる。召喚による転生は二十回くらい経験しているからな。……で、こいつが召喚主のはずなんだが……なんで、こいつは召喚したばかりの俺を無視して、鈍器になりそうな分厚い本を読んでいるんだ? これは、なんの放置プレイだ?)


 心の中でブツブツと、


(それはともかく……また終われなかった。もういいっつぅの。何回やればいいんだよ。こちとら、異世界転生には心底から飽き飽きしてんだよ。もう強さも限界まできたし、世界のことわりについて知らんこともほとんどないし、何より、ぶっちゃけ、どの異世界も大差ないし……もう、俺にとってはオワコンなんだよ、異世界転生とかぁ! 飽きたゲームを延々やらされるとか、どんな拷問?!)



 閃は、魔法陣の上で体育座りをして、深いため息をついた。



 そんな閃をとにかく無視して、ラムドは、


「いや、やはり、どう考えても失敗などありえん……少なくとも、人間などという下等種が出てくることはありえん……どういうことなんじゃろうか……」


 ラムドの心情で言えば、この状態は、一まわし一億円の天元突破神解放ガチャで、ノーマルランクのゴミを引いたようなもの。


 この世界でのラムドの立場は石油王級なので、このメチャメチャ金のかかるガチャも、まだ何度か回せる。

 一応、なんらかの失敗をした時の予備として、もう一回分だけならすぐにでも回せるように準備はしてあるので、最悪、もう一度回せばいいだけの話。


 つまり、決して取り返しのつかない失敗ではない。

 が、だからといって、この「人間」を召喚してしまうなどという、わけのわからん失敗は許容できない。



「うーむ、もしかしたら、ただの人間ではないんじゃろうか……見た感じ、なんの魔力も感じんが……」



 そこで、ラムドはイスから腰を上げて、閃のもとまで近づき、

「やはり、何も感じん。わしの『サードアイ』で見破れん隠蔽魔法はない。どう考えてもただのカス……うーむ」




(たかがサードアイで見破れるフェイクオーラなんざ使うかよ。そんなもん、なんの意味があるってんだ……あー、しっかし、まいったな。究極超神位の自爆魔法まで使って魂を潰したってのに、結局、終われなかった。ほんと、どうすりゃいいんだよ……どうすれば、俺は終わることができるんだ? いったい、どうすれば、この無限地獄から抜け出せるんだよ、くそがぁ!!)




 そこで、ラムドが、閃の頭をコツンと小突き、


「おい、ぬし。何か芸はできるか?」


「……芸?」

「変わった特技は持っておらんのかと聞いておる。……いかんのう。頭も悪いのか」


 やれやれとカブリを振るラムドを見て、せんは頬をヒクつかせる。


(たかが存在値78程度のカスが、ほざくじゃねぇか)


 心の中でそう呟くと、ゆっくり立ち上がり、

「そうだな……じゃあ、こんな 『お遊び』 はどうだ?」


 言いながら、セン(以降、主人公の表記はセンでいきます)は、右手の人差指をラムドに向けて、




「――仮死、ランク1000。 ――擬態、ランク1000」




 魔法を使った瞬間、ラムドの心臓は止まる。

 そして、センの姿がラムドそっくりになった。


「ラムド・セノワール……上級召喚士。存在値の世界ランキングは……3位か。存在値80以下で、世界ランキング、トップスリー……はっ。典型的な中級世界エックスだな」


 最高位の擬態になれば、ただ姿を変えるだけではなく、脳内をトレースすることもできる。



 センは、ラムドの脳内を探りながら、研究室を出る。




 ちなみに、世界のランクは、上から、

 超最上級世界(通称、アルファ)

 最上級世界ベータ

 上級世界ガンマ

 中級世界エックス

 下級世界マイナスエックス

 最下級世界ダブルマイナスエックス






「――ほう。今、勇者がこの魔王城を攻めている真っ最中なのか。とんだスクランブルじゃねぇか。……ってか、この召喚士、ナンバーツーの実力者かつ宰相って立場なのに、なんで、その緊急事態をほっぽりだして、ガチャまわして遊んでんだ?」

 エピソード記憶のツリーを揺らしてみると、

「ああ、なるほど。魔王に『戦力を増強した方がいい』と進言して、研究室にこもっていたのか……どうやら、ここの魔王は、ラムドに頭が上がらないらしいな。魔王の存在値は……ん? ……なんだ、この魔王……魔法が使えない? おいおい、剣技しか使えないのかよ。んーーー……だが、それでも90くらいはあるな。……ほむほむ。どうやら自分でその道を選んだらしい。どんだけ脳筋なんだよ。気合い入りすぎだろ」



 赤い絨毯がしかれている長い廊下を歩いていると、


「ラムド様!」


 ラムド直属の配下の一人であるエレが声をかけてきた。

 ムキムキの体形をした、戦士型の吸血鬼。

 ラムドが召喚した魔物の中ではかなり当たりの方で、

 存在値は、ラムドに召喚された魔物の中だと最高クラスの52。



 エレは、目の前までかけてくると、片膝をついて、

「いかがでしたか?」

「ん? あー、召喚の件か? いや、失敗してしもうた。なんも召喚できんかったわい。ひゃひゃひゃ」


 高位の擬態であれば、人格をトレースすることも容易い。

 配下は何の疑いも持たず、


「そ、そんな……ラムド様が召喚を失敗するなんて……」

「それほどの大召喚だったということじゃ。ちなみに、勇者は今、どのへんじゃ?」

「はっ。現在、第六ゲートを突破し、監獄エリアで、サリエリ様と戦闘中でございます」



 サリエリは、存在値75の堕天使。


 魔王軍序列三位。

 世界ランキング12位の最高位モンスター。

 だが、世界ランキング1位の勇者が相手では時間稼ぎしかできないだろう。



(ふむ。監獄エリアの場所は……なるほど、この辺か)

 頭の中で詳細に思い浮かべた魔王城の見取り図と、サリエリについての情報を掘り起こして、

(ラムドの頭の中にある情報から計測するに……勇者の存在値は95~96ってところか。サリエリの能力とは相性も悪いし、こりゃあ瞬殺かな……となると、勇者が王の間に辿りつくまで、あと十五分といったところか)



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自作コミカライズ版33話公開中!ここから飛べます。 小説家になろう版『さいごのまおうのせかい』 カクヨム版『さいごのまおうのせかい』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
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