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【コミカライズ】センエース~舞い散る閃光の無限神生~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
永久閃光龍神L2章 ラストを待ちながら。

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プロローグ 渋谷降臨。


 プロローグ 渋谷降臨。


「この世界は、あいもかわらずクソのようだ……」


 金曜昼の渋谷スクランブル交差点。

 人で埋め尽くされた喧噪のただ中に、突如として光の裂け目が走った。

 稲妻のように弾ける閃光から、一人の青年が歩み出る。


 年齢は十七歳ほど。

 長羽織をまとった黒髪黒目の姿。

 だが、まとうオーラは都市の電力網を焼き切るほどに重く、周囲の信号機や大型ビジョンは次々に破裂し、映像は砂嵐に沈んだ。


 群衆は戸惑った。

 逃げる者もいれば、スマホを向ける者もいる。

 「やばくね?」「なに、もしかしてテロ的な?」と、まだ比較的呑気な声。

 動画は即座にSNSに拡散された。


#渋谷テロ

#救世主降臨

#新型兵器説

#人間蒸発


 世界がざわめき始める。


 降臨した者の名はセンエース。

 その瞳は、冷徹な色を宿していた。


「……さて。それじゃあ、掃除を始めるか」


 センは目に力を込めて、低く呟いた。


「……【プロパティアイ】……一定以上の罪だけにフォーカス」


 魔法の行使。


 ――その瞬間、センエースの周囲の空気が淀んだ。


 センの視線の中……交差点にいる人間の『魂』が透けて見える。

 どす黒い魂をした人間の『罪の記憶』が、センの脳裏に流れてくる。


 ――ナイフで少女を刺す光景。

 ――同級生をイジメで自殺させた姿。

 ――詐欺でだまし取った金を数える笑顔。


 センはため息交じりに、


「腐ってるねぇ。……それじゃあ、好き放題に生きてきた代償を払おうか」


 次の瞬間、センの視界にうつる民衆の中でも、『罪人の頭上』にのみ、黒い渦が現れた。

 渦は低く唸るように回転し、抗う間もなく罪人を吸い上げて呑み込む。

 直後、渦は跡形もなく霧散し、残されたのは『人が忽然と消えた』という事実だけ。


「き、消えた!」

「な、なに?! 神隠し?!」

「あいつがやったの?!」

「やばい、やばい、に、逃げろ!」


 交差点は一気にパニックに陥った。

 転倒した人間を抱え起こそうとする者もいれば、逆に踏みつけて逃げる者もいる。

 母親にしがみつく子どもが泣き叫び、押し合い圧し合いの中で悲鳴が飛び交った。

 一方で、恐怖に顔を引きつらせながらもスマホを掲げる若者もいる。承認欲求の末路。

 誰もが、恐怖と興奮のはざまで『歴史の瞬間』を撮り逃すまいと必死だった。


 センは、その間も断罪を続けていた。


「お前も……。お前も……お前もだな……」


 視線を送って少し念じるだけで、罪人の頭上に渦が開き、次の瞬間にはその姿が吸い込まれて消え去る。


 パニックが加速する。


 そんな中、センの視界の隅で、

 親とはぐれた子供が、


「ひぃあ!」


 と思いっきり転倒した。


「わぁあああん!」


 と泣いている子供に、センは近づく。

 すると、そこに、

 必死にその子を探していた親が駆け寄ってきて、


「や、や、やめてえ! お願い!」


 そう言いながら、子供を抱きしめて、自分を盾にする。


 センは、震えている親子に、淡々とした声で、


「さっさと逃げろ。一般人にいられると迷惑だ」


 ★


 断罪開始からおよそ5分。

 最初に到着したのは報道各社のヘリだった。

 真昼の空に旋回する数機の機影が、事件の異常さを上空から記録し始める。

 映像はリアルタイムで全国に流れ込み、世間の混乱に拍車をかけた。


 センは空を見上げ、冷たく告げた。


「マスゴミの金儲けに協力する気はない。だが証人は必要だ。一社だけ特別に残してやる。他はすべて――『俺で金儲けを企んだクズ』として断罪する」


 直後、複数のヘリの内部に黒い渦が開き、搭乗員たちは悲鳴を上げる間もなく呑み込まれて消えた。

 操縦士を失った機体は制御不能に陥る――だがセンが片手を掲げると、見えざる糸に引かれるように進路を変え、街を逸れて湾岸へ落ちた。

 街には一切の被害が及んでいない。


 ただ一機――残されたヘリだけが、交差点の上空に留まった。

 その機内では、記者と操縦士が蒼白な顔を向け合う。


「……お、俺たちだけ……?」

「な、なんで……墜ちない……?」


 そこへ、地を割るような大声が響いた。


「お前らだけは殺さないでおいてやる! ビビらず、正確に、今から起こることを記録しろ!」


 記者はハッと息を呑み、震える手でカメラを握り直した。

 操縦士は唇をかみしめ、必死に機体を安定させる。


「……た、助けられた……?」

「な、なんなんだ……あいつ……」

「人間では……ないよな……絶対……」


 恐怖と安堵に押し潰されそうになりながらも、記者はレンズを構え直す。

 唯一残されたそのヘリは、真昼の渋谷を旋回しながら、センの姿を確かに捉え続けていた。


 ★


 ――当然、警察は即座に出動した。


 交差点に警察車両が雪崩れ込み、赤色灯が真昼の渋谷を赤く染め上げる。


 断罪開始から10分。

 『人が消える』『超常的な現象』という現場報告が警視庁本部に届き、すぐさまSAT出動が決定された。

 市ヶ谷の拠点から黒塗りの輸送車が渋谷に向かって発進する。


 ――断罪開始から20分。

 特殊急襲部隊――SATの黒塗りの輸送車が停止し、スライドドアが音を立てて開いた。


「チーム・アルファ、展開!」


 指揮官の号令とともに、完全武装の隊員が次々と飛び出す。


 彼らの手にはH&K MP5A5短機関銃、M4カービン、レミントンM870ショットガン。

 サプレッサーを装着した銃口が一斉に閃光の中心へと向けられた。

 盾班は厚さ数センチの防弾シールドを前に掲げ、楔形陣形を形成する。

 先頭は盾持ち、二列目は射手、三列目には後方支援と救護要員。


「アルファ、前進。ブラボーは側面を固めろ!」

「対象確認。青い長羽織の男、動きなし」

「アルファ・リーダーより管制、射撃許可を要請する」


 SAT隊長が拡声器を掲げ、センに向かって、声を張り上げた。


「こちら警視庁特殊急襲部隊! 抵抗するな! 交差点は完全に包囲している! 武器を捨て、両手を頭の後ろに!」


 静寂が訪れた。

 狙撃班がビル屋上からライフルを構え、赤いレーザーサイトがセンの胸元に重なる。

 数十の銃口が、同時に、たったひとりの男を狙っていた。


 センはその光景を眺め、薄く笑みを浮かべた。


「テロリストが暴れているってのに……話し合いで解決しようって? 流石、日本だぜ。ここまで平和ボケした国は他にない」


 指揮官が無線に怒声を飛ばす。


「管制、至急! 射撃許可を!」


 だが返答は遅れた。

 上層部の逡巡が、ほんの数秒を奪った。


 センは、その隙を見逃さない。

 指を軽く弾いた。


 ――瞬間。


 陣形の中央で、隊員たちの頭上に黒い渦が次々と開いた。

 渦は低く唸りを上げながら回転し、先頭の盾班を、続いて二列目の射手を、次々と吸い上げて呑み込んでいく。

 重いシールドや銃だけがアスファルトに叩きつけられ、持ち主の姿は一瞬で消え失せた。


「アルファ……っ、次々に吸い込まれて……!」

「ブラボーも……くそ、退避……!」

「――アルファ、ブラボー、共に壊滅! 退避せよ! 退──」


 無線が途中でぷつりと途切れる。

 報告を叫んでいた隊員自身も、頭上の渦に吸い込まれて消えたのだ。


 盾が散乱し、銃が転がり、かすかな残響だけが煙の中に溶けていく。

 数秒前まで統制されていた精鋭部隊は、いまや瓦解していた。


 センは、静まり返った交差点の中央で淡々と呟いた。




「胸糞な罪人と……俺に殺意を向けた者は、全員もれなく、ヴァルハラへと旅立ってもらう」



 ――次回、速報:自衛隊、渋谷に展開。


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自作コミカライズ版36話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
センエースが断罪しているのは単なる犯罪者だけでなく、 この平和ボケした社会そのもののように感じられ、 読者自身が自分の頭上に渦は現れないか? と問いかけられているような緊張感があります。
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