最終話 キモい扉。
最終話 キモい扉。
色々と考えてみたものの、
結局、アホの子センちゃんでは何にも届かず、
「……結局のところは、大一アルファ人を鍛えるしかないか……」
『やる』と決めたら、そこからは早いのがセンエースの特質の一つ。
一回決めてしまえば、もうぐじぐじ悩んだり……しないわけでもないが、基本的には猪突猛進。
「で、どうやって、大一アルファに行くんだ? 異世界移動は、扉を使わないと基本できないって話だったよな」
「この世界には、幸い、『転移扉』があるからね。あそこから移動することが可能だよ」
「扉……ああ……あれか。鍵穴が100個あるやつ……」
何度もマラソンしたので流石に憶えている。
蝉原が続けて、
「一回移動してしまえば、もうこっちに戻ってくることはできないから、その点だけ気をつけて。……で、これが、大一アルファに向かう用の冒険の書」
「あの扉、『冒険の書用の鍵穴』とかあったか?」
「カギを所有した状態で近づけば、ニュって出てくるよ」
「どこまでもキモい扉だぜぇ……」
感想を一つ口にしてから、
「……よし……じゃあ、いくぞ、蝉原。俺の扱い方を間違えるなよ。丁重に扱わないと火傷するぜ。なんせ、俺は切れたナイフよりも狂気的だからなぁ」
「いや、俺は行かないよ」
「ふぇ?」
「ここから先は、全身全霊で、ラスト相手に時間稼ぎをしないといけないから、火の玉で意識を飛ばすようなナメプはできないよ」
「できる、できる。お前なら出来る。気合いだ、気合だ、気合いだ!」
「じゃあ、そろそろ本体に戻るよ。頑張ってね。世界の命運を君に託した」
「待て! ちょっとでいいからサポートしてくれ! 俺の脳は、すでに、『蝉原がいるから大丈夫だろう』モードになっているんだ! おいていくな! 大親友を見捨てる気か!」
「大丈夫、君に友達はいないよ」
最後にそう言って、
火の玉蝉原は、スゥっと消えていった。
「……えぇ……マジぃ……だるぅ……自分の頭で考えて決断して行動するのダルぅ……」
何度も、その場で、深いため息をついた。
しんどすぎて、ゲロ吐きそう。
「すぅ……はぁ……」
仕方ないので、深呼吸を繰り返す。
一度切れた精神の糸を結び直していく。
「しゃーねぇ……やるか……」
そう言いながら、
センは冒険の書を片手に、扉へと向かいました。
扉から異世界大一アルファに移動する際、
脳内に、謎の声が降り注ぎ、
『色々なルール』を聞かされて、センエースは、
それはそれは辟易しましたとさ。
めでたし、めでたし。
拝啓。
向寒の候、皆々様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
平素より『センエース神話』をご愛顧賜りましたこと、謹んで厚く御礼申し上げます。
お蔭をもちまして本作はここに無事、最終話の終幕を迎える運びとなりました。
つたなき筆ながら張り巡らせました数多の伏線も、ひとまずは収め得たものと自負いたしております。
連載をお支えくださいました皆々様に、あらためて心より御礼申し上げます。
頂戴したご声援・ご感想・ご評価の一つひとつが、
私にとりまして何よりの励みでございました。
読者皆様のお健やかな日々と、
今後ますますのご多幸ご発展を心よりお祈り申し上げます。
いつの日かまた別の物語、あるいはどこかの頁の片隅にて相見えますことを願いつつ、ここに結びとさせていただきます。
敬具
令和7年11月11日 ミリオンレイス




