10話 トウシは俺のヒーローだぞ。
10話 トウシは俺のヒーローだぞ。
「だけど、なんだ?」
「俺が保存していたトウシの魂魄が……ラストに呑まれてしまった……」
「……トウシがそう簡単に、敵に呑まれるわけねぇだろ。あいつは世界最強のヒーローだぞ。俺の推しをナメんなよ」
「えっとねぇ……むっちゃ複雑なんだけど……できるだけ簡潔に言うと……ラストって、タナカ・イス・トウシの闇の部分……みたいなところがあるんだよね」
ラストの生みの親であるエルファ……の飼い主であるルシファーは、田中トウシの対価。
「……トウシに闇の部分なんかねぇよ。あいつは栄光の英雄だ。この上なく尊い天才中の天才。勝利に愛された完全なる王。比類なく気高いスーパースター。俺は詳しいんだ。ファンだからな。頻繁にライブに行ってグッズを買うレベルのガチ勢だ」
「田中家全体の業というか、カルマというか、運命というか……まあ、そんな感じのアレだから、対ラスト戦において、トウシは使えない。使えないというか、敵だね。トウシもトウシでラストに抗うだろうから、『トウシを搭載したラスト』が敵ってわけじゃないけどね」
「ちっ、クソの役にも立たないチン〇ス野郎だ。だから、俺はあいつが嫌いなんだよ。あのゲロカス野郎、性格悪いし、顔も悪いし、カシコぶっているけど、実際、大したことねぇし。嫌いだわぁ……殺したいわぁ……あんなやつを推しにする奴の気がしれねぇ。いねぇか、あんなゴミを推しにする変態とか」
一気に反転アンチ化したセン。
表返っただけとも言えるが。
「それで、最初の結論に戻るんだけど……『双子の悪魔ラスト』を処理するには、君と、もうひとつ『ラストに対抗できる力』が必要だ」
「なるほど……となると、ついにゼノリカの出番だな。俺が手塩に育てた秘蔵っ子たちが、ついにベールを脱ぐ時がきたかっ。この『さいごのまおうのせかい』で、『俺の配下の因子をもったやつ』をたくさん強化したが……それは、このための伏線だったわけだな? わかります。どう見ても布石です。本当にありがとうございました」
「残念ながら、ゼノリカも使えない」
「なんなんだ、お前は。ヒス気味のお母さんか? なんでもかんでも否定しやがって」
「これも、むちゃくちゃ説明が面倒だな……えっとね……まず、ラストは、『原初の世界の深層』の『第一層』の『亜空間』にいるんだけど……」
「日本語でオケだお」
「今、君がいるこの世界……『さいごのまおうのせかい』が、深層の一層なんだ。この世界にくるために使った冒険の書……あれは『ランク1の鍵』で、使うと、『原初深層の一層』に入れる」




