9話 双子の特殊能力。
9話 双子の特殊能力。
「……俺みたいなコミュ障陰キャの童貞が異性に愛されることなんてありえない。よってお前の推測は誤っている。QOL」
「いいよ、今は、そういうの」
雑に、センの多重残像ボケを切り捨ててから、
「おまけに、ラストには、とても厄介な特殊能力があるんだ」
「まだ、悪いニュースがあんのかい。もうお腹いっぱいだぜ」
「ラストは『自分を殺せる可能性のある存在』……つまり『センエース』に対処するため、――『片割れを倒した相手に対して無敵になる力』――を持っている」
「ゲームとかアニメとかでたまにいるタイプだな。たしか、ペル〇ナとかエヴァ〇ゲリオンでいた気がする」
「君なら、ラストを殺すことは可能だろう。でも、君が『ラスト姉』を倒した瞬間、『ラスト妹』は、君に対して『無敵』になる」
「俺だけで殺そうと思うと、姉妹同時にやらないといけないってことか。となると、広域爆撃で殺すのがベターかな」
「無理だね。ラストは、君と違ってバカじゃない」
「表出ろ。そしてかかってこい。死ぬまで殺し合おうじゃないか」
「ラストは、同時に殺されないための手段……というか、前提を死ぬほど積んでいる。シンプルなところで言えば、『同じ空間に存在しない』とかね」
「じゃあ、どうしろってんだ」
「君以外の戦力を確保する必要がある。ラストという強大な怪物を倒せる……もう一つの戦力を」
「お前は? 本当に一大事だってんなら手ぇ貸せや、こら」
「手は貸すよ。というか、今、俺の本体が、必死にラストを抑えている。けど、それが限界だ。こっちにも色々と事情があってね……今の俺じゃあ、ラストの片割れを殺すことができない」
「使えないゴミだな。だから、お前はダメなんだ。反省しろ」
「もちろん猛省するさ。ふがいなくて泣きたくなるよ」
「となるとトウシだな。なんだったら、トウシだけでよさそうだ。あいつなら、そのトンデモ頭脳を駆使して、単騎で『無敵システム』を突破することも可能だろう。よし、そうしよう。それがいい」
「……えっとね……めちゃくちゃ複雑な状況だから、全部は説明せずに、超簡潔に言うけど……トウシには頼れない」
「お前が殺したからか? この『さいごのまおうのせかい』に来る前に、なんか、そんなこと言っていたよな。だったら、さっさと復活させ――」
「君を、『さいごのまおうのせかい』から、原初の世界に帰還させた後で、再生させる……という手筈になっていたんだけど……」




