8話 俺の大親友は格が違った。
8話 俺の大親友は格が違った。
――龍閃崩拳でセミディアベルをぶちぬいた直後。
センは空を見上げて、
「さて……ここからどうしたものか……」
セミディアベルとゼンドートによってめちゃくちゃにされた世界を修正するのは大前提。
まず何から着手しようか……と、考えていると、
――背後で空気が揺れた。
振り返ると、小さな火の玉がゆらゆら浮いている。
「……ん?」
火の玉はセンに近づき、耳元で軽い声を鳴らした。
「やあ、センくん」
「お前は……セミディアベル……いや……蝉原か?」
「こんな姿になっても、一瞬で俺だと気づいてくれるんだね。流石、俺の大親友は格が違った」
「俺に友達はいねぇよ」
「そんなクソ以下の事を言っている場合じゃないよ、センくん」
「……クソ以下……」
「大変なことが起きてしまった。世界一のヒーローである君じゃなければ解決できない大問題が!」
「そうか、良かったな。お疲れ」
「軽く流している場合じゃない! 本当に大変なんだ! 助けてくれ!」
「もちろん助けてくれるさ。これまで、お前が助けてきた中の誰かがな。俺はお前から嫌がらせをされた記憶しかないから、お前に手を差しのべたりしないが」
「いいかい、よく聞いてくれ」
火の玉――蝉原は、ゆっくりと言葉を整えた。
声の軽さと裏腹に、内容は重い。
「……君のせいで、『エルファ』が暴走した」
「……ほう、おだやかじゃないね。『俺のせい』ってところが特に」
「エルファは、長い時間、君と共にすごしたことで、君を激しく愛してしまった。その感情の高ぶりが『美女型の怪物』となって具現化し、狂ったように暴走している。……名前は『ラスト』。ラストは、涼宮ハルヒ〇憂鬱でいうところの『神人』みたいなもの。制御できないスタンドやペルソナと思ってくれてもいい」
エルファの感情が怪物として実体化した存在……それがラスト。
エルファから産まれた存在でありながら、エルファを遥かに凌駕した怪物の中の怪物。
蝉原は続ける。
火の膜がぼうっと明滅した。
「最悪なことに、俺の携帯ドラゴン『アベル』――『セミディアベル』が、安易にエルファを『増殖』したせいで、ラストは2体も産まれてしまった。まあ、『双子』みたいな感じだね。これが何より厄介」
「つまり、アベルの飼い主であるお前が悪いということだな。万死に値する。そこになおれ。一万回、介錯してやる。ありがたく思え」
「発端は君だよ。君がエルファに愛されなければ、ラストは産まれなかった。つまり、君が一番悪い」




