5話 バックアップ。
5話 バックアップ。
――ソルは、『もしもの時のためのセンエースのバックアップ』を山ほど用意している。
月光寺時一もバックアップの一つ。
センエースは大事な存在なので、もしもの時のための保険が無数に用意されている。
そして、それはルシファーも同じ。
ルシファーにも、バックアップが山ほど存在する。
……センエースほどではないが、ルシファーも、だいぶ慎重に扱われているのだ。
そして、『エルファ』とは、ルシファーの携帯ドラゴンのバックアップの名前。
『9番』の正体を簡潔に言うと、
『ルシファーの携帯ドラゴン【エルメス】のバックアップ……の中の一つ』
立場的には月光寺をも大きく下回る、ソル視点では、かなり低位の概念。
エルメスをパソコン本体とした場合のUSBメモリがエルファ。
そのエルファの……さらにバックアップの擬人化が9番。
USB一つに保存してあるだけでは不安なので、他にも無数に保険を用意してあるのだが、9番は、そういう『大量に存在するバックアップ』の一つ。
バックアップは山ほどあるので、一つか二つ破損して破棄になっても誰も困らない。
……ふいに、9番が、冷めた顔で言った。
「僕の本体の主人……『田中・イス・ルシファー』は、盲目的に、オリジナルセンエースを追い求める。けど、それは辛い道だと思う。たぶん、センエースはルシファーを愛してくれないから。いや、この表現は間違っているね。正しく言うと……センエースは、ルシファー『だけ』を愛してくれることはない。センエースは、多くのヒロインに愛され過ぎているから。たった一人を愛することは出来ない。それが気に入らなくて、許せなくて……本体ルシファーは、色々と、問題を起こす」
ルシファーは、『田中・イス・トウシ』という栄光の影……もっと言えば深淵。
トウシという『希望』の……対価。
それも一つのアリア・ギアス。
センエースという光の対価としてバーチャという闇がいるように、
トウシという光の対価としてルシファーという極悪が存在する。
ルシファーは極めて不安定な因子。
悪として生まれているが、悪だけに傾かない自由奔放な影。
ルシファーは、『センエースだいちゅき』という自由奔放を飲み込み膨らむ災厄。
「ルシファーが問題を起こした時だけ、センエースはルシファーを見つめてくれる。まるで、イタズラで親の気を引く子供みたい。そんな関係……虚しいだけだし、正直、みっともない」
「月光寺時一のような、しょうもないオルタナティブで満足するよりマシな気がするが……」




