211話 もっとよこせ。
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それを記念しての一日10話投稿!!
本日の10話目!!!!!!!
――今回は今までに増してえぐかった……
211話 もっとよこせ。
「僕を見下すことは絶対に許さない!」
「正義を貫きたいのか、それとも、バカにされるのが嫌なのか……どっちなのかな?」
「屁理屈でごまかそうとしても無駄だぁああ!」
「屁理屈……かなぁ?」
次の波が来る。
縦横無尽の連打。
ゼンドートの攻めは、『止まらないこと自体を目的にした奔流』だった。
――センは『見』に徹する。
ただ、優雅にいなす。
余裕で、全部。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をし始めたゼンドートに、
センは、
「どうした最強。お前の正義はそんなもんか? 正義が足りねぇよ、ゼンドート。もっと、正義を追加していこうぜ。山盛りの正義を袋に入れて、塩でもいれてシャカシャカすれば、少しは香ばしくなるだろう」
意味不明な言葉で煽りながら、
センは、軽い反撃に出る。
カウンターですらない、ただのジャブ。
しかし、それでも、
「ぐおっ!!」
ゼンドートの上体が、弓なりにのけぞった。
軋む背骨を無理やり正常な位置に戻し、
肩で呼吸をかき集めながら、
ゼンドートは歯茎ごと怒号を吐き出した。
「ぐぎぎぃいいがぁああああ!!」
額の血管が縄のように浮き、瞳孔が針穴まで縮む。
「僕の中の可能性よぉおおお! もっとだぁあああ!」
空へ向けて、口から飛沫を撒き散らす。
ワガママな暴君の追加オーダー。
「もっとよこせぇえええ! 力だぁ! センエースを殺せる力ぁあああ!」
眼球の表面を薄い赤が流れ、焦点が外れて戻らない。
――目が血走り、正気のフチが削れていく。
その瞬間、皮膚の下で何かが沸いた。
筋束がほどけて粘つく糸になり、骨膜の上に泡立つ肉が鈍く沈む。
肩の丸みは崩れ、肘は逆流する泥のように形を失い、色が生肉と煤の中間に濁った。
――体が溶け始め、グロく崩れていく。
「がぁあああああ!! な、なんだぁああ! なに、これぇえええ!」
皮膚が音を立てて裂け、すぐに溶解で塞がる。
痛みは熱と冷の交互打ちで脳を叩き、
叫びは破れた袋の風の音に変わった。
――己の崩壊にパニックを起こしているゼンドート。
それを、ゼンドートの中から感じつつ、セミディアベルが、
(あれ? なんで崩れた? まだまだ余裕で許容範囲のはず……ああ、そうか、なるほど。私が中にいるからか)
透明な笑い声が響く。
冷たい観察だけが波紋も立てずに広がり、結論だけが静かに沈む。
「なにを言っている! セミディアベルぅうう! なにがどうなって、僕はこうなっているんだぁあああ!」
(君の精神力はアッパレだよ。センエースを前にして、それでも、君は自分の勝利を疑っていない。素晴らしいよ。けど、私は、一ミリも君の勝利を信用していない)
……なんとか……達成……




