209話 記憶を取り戻す条件。
209話 記憶を取り戻す条件。
荘厳でも派手でもなく、しかし絶対に『そこに在る』という質量で、
――センエースは己の命を再確認する。
「……ちっ」
己の全部に対し、センは、舌打ちを一つはさむ。
多くの意味を込めた屈辱を体現。
――背では『毘沙門天の剣翼』が清冽な音を立てて展開した。
欠けはない。
円環の核は磨き直した宝玉のように澄み、神字は一画も欠けずに流れている。
だが、エグゾギアの駆動音が、どこにもない。
肉体と毘沙門天は復活したが、エグゾギアは死んだまま。
「な……なんだ、その異常な力。エグゾギアもなしで……なぜ……」
ゼンドートの声が硬くなる。
センは指先で空気をつまむみたいに肩を回し、口端を釣り上げた。
「全部思い出したぜ。どうやら『一度死ぬこと』が、『記憶を取り戻す条件』だったらしい。つまりは、『センエースの魂を見つけ出してぶっ殺せ』ってところか。あのミッションは、俺じゃなく、ゼンドートが受注していたものだったらしい。……ふざけてやがるぜ」
「……な、何を言って……」
「わからないか? だろうな。それでいいんだ。伏線だの前提だの、そんなもんクソくらえだぜ。大事なのは過去じゃねぇ。未来だ。もっと言えば、お前を殺す未来だな」
言葉の終わりと同時に、足の置き方が変わる。
踵とつま先で二重の円を切り、腰の節をひとつ落とす。
肩は脱力、目は静謐。
武の真髄――立つだけで攻防が出来あがる神の構え。
「――俺は神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。舞い散る閃光センエース」
剣翼の神字が、風に花弁を撒くみたいに光片へ分解され、センの輪郭に沿って再結晶する。
「――つまりは、貴様を殺す者だ」
場の温度が半拍下がり、次の半拍で急に春の温みへ反転。
圧と軽さが同居する不条理な気候――『支配』の気配だけが濃密になる。
――名乗りで位階を確定させ、場の主導権を奪い返した。
ゼンドートは言葉を失う。
視線だけが忙しく、しかし追いつかない。
センは、荘厳に、
「刮目するがいい。お前だけが神化できるなんていう特別扱いはありえねぇ。お前にできることは……誰にでもできるんだ」
センは胸の前で手を合わせる。
祈っているのではない。
ただ、心を整えているだけ。
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「――/\☆*【【永久閃光神化2】】*☆/\――」
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爆ぜる、のではない。
光が静かに濃くなる龍韻。




