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【コミカライズ】センエース~舞い散る閃光の無限神生~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
永久閃光龍神K章 センエース。

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206話 約束を破るようなクズは許さない。

挿絵(By みてみん)

自作コミカライズ版36話配信中!

下のリンクから、直接36話をダウンロードできるページに飛べるようにしてあります。

それを記念しての一日10話投稿!!


本日の5話目!!!!!


 206話 約束を破るようなクズは許さない。


 ――戦場の中心には、穴のような静寂だけが残っていた。

 焼痕も、血も、灰も、影すら――何ひとつ残っていない。

 そこに『在った』という事実だけが、風の通り道のような空洞となって残る。


 17番はその空洞を呆然と見つめた。

 口は動くのに声が出ない。

 胸骨の内側で心臓が空吹かしを続け、指先は冷え、膝は勝手に震える。

 やっとのことで『呼吸の形をした言葉』がこぼれ落ちた。


「センエース……きみでも無理なのか……」


 答える者は、もういない。

 だから、空洞は返事をせず、ただ沈黙する。


 その沈黙へ、靴音が二歩、三歩と重なる。

 乾いた音は、秩序の鈴。

 ゼンドートが、17番の目の前で立ち止まり、長い影を地に落とす。


「17番……よくも裏切ってくれたね。ここから、どうなるか、わかるかな?」


 指が軽く鳴った。

 ――パチン。

 それは処刑台の木槌のように、場の空気を確定させる。


 空間の縫い目がひとつ緩み、そこから引き出されるように9番が現れた。

 肩をすくめ、上体を縮こまらせ、細い呼吸で生き延びようとする生き物の姿勢。

 足首がかすかにもつれて、すぐに立て直す。


 9番は震えていた。

 が、逃げなかった。


 ゼンドートはわずかに口角を上げる。

 冷ややかな優越と、自己正当化の温度が混じった笑み。


「約束通り、9番だけは殺さないで残した。正義に反する行動だが、僕は、なによりも、君との約束を大事にしたのだ」


 実際にその約束を守ったのはセミディアベル。

 だがゼンドートは、その『約束に対する誠実さ』を自分の功績として語る。

 語ることで、真実の配置を上書きする。


「君はそんな僕の誠意を踏みにじった。よって公開処刑とする、君の前で、9番を壊す。徹底的に」


 17番のノドがヒクリと鳴る。

 呼吸が薄くなり、視界のフチに涙がにじむ。

 ゼンドートは一呼吸置いて、さらりと続けた。


「できれば、9番が女であればよかった。より大きな罰を君に与えることができたから。……まあ、そこは言っても仕方がないところだけれど」


 言い草は淡々としていた。

 極度な残酷は、いつだって丁寧な顔をしてやって来る。

 彼はゆっくりと9番に向かって歩き出す。

 歩幅は変わらず、音量も一定。裁定者の歩み。


 17番の体が反射で動く。

 9番の前に割って入り、両手を地につける。


 ――土下座。


 額が石に当たって鈍い音を立てる。

 深く、低く、土下座。

 背中の骨が、羞恥と恐怖と後悔の重みで見えない鎖みたいに軋む。


「ボクのことはどうしてくれてもいいから……9番だけは殺さないで」



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自作コミカライズ版36話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
「焼痕も、血も、灰も、影すら――何ひとつ残っていない。そこに『在った』という事実だけが、風の通り道のような空洞となって残る。」 という冒頭の描写に、鳥肌が立ちました。 戦いの後の物理的な虚無と、 17…
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