200話 奈落の百華。
明日、自作コミカライズ版36を配信します!
それを記念して、明日は10話投稿します(*´▽`*)
……この無茶を初めて、そろそろ2年……
200話 奈落の百華。
「うそだろ……か、勘弁してくれ……」
割とガチで懇願するものの、返答はない。
ゼンドートはセンの視界から音もなく一瞬で消えた。
空間をねじふせるように距離を詰め、
次の瞬間には、神殺しの拳がセンの胸骨に沈んでいる。
「――殺神断理拳」
理屈の骨格ごと殴り砕く重さ。
詩盾が遅れ、息が切れる。
「うぬべぇえええ!!」
目玉が飛び出そうになるほどの衝撃。
それで終わらない。
適切に丁寧に、複雑な技を乱舞するゼンドート。
「うげげげばばばがががっ!」
センの視界がちかちかと粒子化する。
あまりの衝撃に脳が破裂しそう。
終わらない連打を浴びる中、センは歯を食いしばり、
上体をひねって、反射の速度で、
「ぐっ……百華・神速閃拳!!!」
世界に刻む。
音速が嫉妬する連打。
ゼンドートは一拍だけ視線を泳がせる。
空白が挟まれ、反応の窓が奪われた瞬間、
肘と膝の密着連鎖が押し込まれた。
骨が順番に鳴り、筋束が悲鳴を上げる。
ゼンドートは一歩だけ踏み、回転体でセンエースの中枢を打ち抜く。
――殺神星落。
重さとリズムが一点に集約され、センの連打が飲み込まれる。
背面の壁が蜂の巣に変わった。
「ずぇえええ?!」
センの肺が折り畳まれ、指先が痺れる。
「っ……ぐっ……」
――ズタズタのセンに、
ゼンドートは涼しげに、
「生命力だけは褒めてあげるよ。普通ならとっくに死んでいる。よくも、まあ、生きていられるものだと感心する」
「う……ぎぃ……」
「だが、これは耐えられないだろう」
ゼンドートの両掌が、静かに向き合う。
指先の間で黒い風が渦を巻き、灯のない光が息を始める。
術式は体術と別系統――だが、ゼンドートは殺神拳で作った修羅の波動をそのまま核へ繋いだ。
胸郭の前に、世界の継ぎ目が薄く透ける。
それを見たセンは、渋い顔で、
「嫌な色じゃねぇか……ご機嫌だな」
歯噛みし、足を半歩ずらす。
剣翼が盾句の詩を準備する。
白炎に黒が混じり、推進孔が唸る。
ゼンドートは目を伏せ、祈るでもなく、宣告でもなく、ただ事務的に、
「さようなら、センエース。――異次元砲」
世界の皮膜がめくれ、色のない光が襲いかかる。
空間の表面が裏返り、
現実の薄皮がひと層はぎ取られたみたいに、
――温度と音が同時に失われた。
……ゼンドートの照射が世界ごとめくって押し寄せてくる。
センは歯の根を噛み合わせ、詩を切り替えた。
舌の裏で神字の拍を刻み、肺の奥へ短句を落とす。
――盾句、起動。
毘沙門天の剣翼が一枚、円環の核へと反転し、金糸の神字が疾走する。
剣身の文様が一斉に立ち上がり、
空虚の面に対抗する『こちら側の面』を築き上げる。
「……多重起動ぉおおお! オォオダァアアアア! ――最後の砦ぇええええええええ!!!!」




