179話 実に素晴らしい。
179話 実に素晴らしい。
白目をむいて盛大に吐血する17番に、
センは、
「ウォーミングアップに付き合ってくれたこと、感謝するよ。ただ、準備運動はもう十分だから、その辺で寝てろ。邪魔」
そう言いながら、17番を豪快に蹴り飛ばす。
吹っ飛んで壁に激突した17番は、
そのままズルズルと崩れ落ち、血泡を吐きながら床に沈んだ。
白目を剥き、痙攣する手指を止められず、完全に戦闘不能――もはや立ち上がれる様子はなかった。
センはその姿に一瞥すら与えず、ゼンドートとセミディアベルの二人へと視線を移す。
「さあ……それじゃあ、本格的に殺し合おうか」
そう言ったセンに、ゼンドートが、眉間にしわを寄せて、
「ずいぶんと調子に乗っているな、センエース」
「乗ってねぇよ。めちゃめちゃ冷静だろ。分かっているからな。……どうせ、お前ら、今の俺よりも高い数字を出せるんだろ?」
そう言いながら、コキっと首を鳴らし、
「むき出しで来い。超えてやるよ」
「……やはり図に乗っているな。不愉快極まりない」
そう言いながら、ゼンドートは飛び出した。
人間を遥かに超越した速度で距離を詰めて、
センに一撃をくらわそうとする、
――が、
センは、優雅に回避して、
「たかだか存在値30京程度の出力で戦おうとするなよ。『アンパ〇マンの三輪車』でF1に参加するようなもんだぜ」
そう言いながら、センは、水面蹴りでゼンドートの足を払うと、
落ちてきた頭に右ショートフックを合わせた。
拳が当たったと同時、ゼンドートの頭は豆腐みたいにグチャっとつぶれた。
その様子を見ていたセミディアベルが、
パチパチと拍手をしながら、ニコニコと、
「素晴らしい。さすがだ、センエース」
そう言ってから、頭が潰れているゼンドートに、回復の魔法をかける。
みるみるうちに再生していくゼンドートの頭部。
「くはっ」
ゼンドートは、呼吸を再開すると、しんどそうに胸を抑えて、
「はぁ……はぁ……よくも、私の頭を……」
イライラした顔でセンを睨みつつも、
セミディアベルの方へと歩いていき、
「今のままでは勝てません。新しいプランをお願いします、セミディアベル公爵」
「んー……」
「な、なんですか?」
「君って、自分一人だけの時は、限界まで頑張るけれど、後ろに誰かが控えていると、簡単に引くよねぇ」
「それは当然のことでしょう。自分しか戦力がいないときと、自分以外にも戦力がある時で、区別なく、まったく同じ行動をとる人間などいないと思いますが?」
勝ったな、風呂入ってくる。




