178話 この程度のキチ〇イは想定の範囲内。
178話 この程度のキチ〇イは想定の範囲内。
「――だから、ビビる必要は一切ない」
そう言いながら、センは、極めてゆっくりとしたテンポで、17番のもとへと近づいていく。
スーパースローかってぐらいゆっくりとした歩みなのに、
17番は、
「ぅっ」
あまりの圧力にビビって、勢いよく後方へとバックステップ。
センエースの全身からあふれ出るオーラを前に、全身から湧きだす脂汗が止まらない。
「……これが……合計18兆年を積んできた怪物の覇気……」
ごくりとツバを飲む17番。
そんな17番に、セミディアベルが、
「9兆年分は、君が奪っただろう?」
と、前提をおさらいしてから、
「ふふ……心配しなくていいよ、17番くん。ここまでは想定の範囲内だ」
「マジですか? え、ここまでが? センエースが18兆年を積むことが想定の範囲内なんてことあります?」
「ありえるさ。私はセンエースについて、少しだけ詳しいからねぇ」
と、本当なのか嘘なのか全くわからないテンポでそう言うと、
ゼンドートの方に視線を向けて、
「さあ、ゼンドートくん。死闘の時間だ。センエースは強いからね。油断しないように」
「……言われなくても、見れば分かりますよ。凄まじい魔力とオーラだ。これ、勝てるんですか?」
「君なら勝てるだろう? なんせ、君は絶対正義なんだから。正義は絶対に勝つ。そうだろう?」
「……これまで通り、サポートをしてもらえるんですよね」
「もちろんだとも。まだプランBは発動していないし、それ以外にも、まだまだプランはあるから、安心して闘ってくれたまえ」
「……はぁ」
とタメ息をついてから、
ゼンドートは、全身の魔力とオーラを解き放ち、
30京の力を解放すると、
センエースを睨みつつ、丁寧な武を構えた。
その流れの中で、ゼンドートは、17番に、
「17番……先陣は君が切ってくれ。私はサポートにまわる」
「……ぇえ。それって一番危ない仕事ですよね」
「違う。もっとも名誉ある仕事だ」
「……じゃあ、自分でやればいいのに……なんてことを思わなくもないですが、まあ、いいですよ。いきますよ」
そう言って、17番は、ゼンドートのサポートを受けつつ、
センに攻撃をしかけた。
まずは軽い挨拶程度のジャブ……を入れようとしたのだが、
しかし、センは、そんな17番のジャブを半身で避けると、
「縁側でお茶を飲んでいるみたいな動きだな。悪いが、ゲートボールに付き合う気はない」
と、高齢者からヘイトを買いそうなことを口にしつつ、
17番の腹部に、爆速の膝をぶちこんでいく。
「ぐべはぁああああっ!!」




