174話 肉体強化とアイテム改造……両方を同時にやらなくちゃいけないのが、ヒーローのつらいところだな。
174話 肉体強化とアイテム改造……両方を同時にやらなくちゃいけないのが、ヒーローのつらいところだな。
即答した瞬間、エルファの輪郭が強制的に二重化され、
フォークされたコピーは処理落ちの残像を撒き散らしながら増殖した。
『Clone_Instance=∞/上限値不明。オーラ出力:未定義。リソース割り当て不能――致命的エラー』
オーラが跳ね上がり、空間の床がノイズ交じりにバグって欠け落ちる。
白いステージに、赤黒のノイズバーとエラーメッセージが縦横に走った。
「……それでいい。そうじゃなきゃ、あのカスどもを殺せねぇ」
修羅の推進孔が一斉に炎を噴き、空間を焼き切る。
「さあ、行こうか。……9兆年……やだねぇ、ほんと。なんでそんな長いコト……はぁ」
ほんの少しだけ本音を口にしてから、
センは全身に気合いを入れる。
弱音を口にしたとしても、決して止まりはしない。
爆音とともに特攻をぶちかました瞬間――
#THREAD COLLISION
#HEAP CORRUPTION
#RUNTIME_EXCEPTION: 修羅モード強行継続
血と殺意のログファイルが、無限の舞台に刻まれていく。
世界そのものがデバッグ画面のように崩壊しながら、
――紅の修羅道を描き始める。
★
――2兆年が経過したところで、
センのMAX存在値は、『28京』にまで底上げされていた。
前回の時よりも、明らかに早い速度で成長している。
「このまま9兆年やれば……120京ぐらいまではいけるか……」
暴れるバグエルファの攻撃をギリギリのところで回避しながら、
センは未来を演算していく。
「俺の戦闘力と数値を底上げするのは当然として……毘沙門天の改造にも、ここからは大量のリソースを注いでいくか。戦闘鍛練と同時進行で毘沙門天を魔改造……ついでに、エグゾギア【修羅】のOSも改造。……やることがいっぱいだ……マジで、1000兆年ぐらいは欲しかったなぁ……9兆年じゃ、全然たりねぇ」
ソウルゲート内には無数の『世界断層』が存在する。
イメージとしては、
一階が戦闘用施設で、
二階が工房。
階段で区切られているのではく、
次元の断裂によって仕切られている。
――白と灰の無限舞台に、もうひとつの空間が折り畳まれて咲いた。
それは城塞都市のようにも、巨大な要塞工場のようにも見える。
――名称は、ウィトゲンシュタインのアトリエ。
中心の観測ホールから六方向へ、用途の異なるルーム群が同心円状に連結され、巨大な歯車神経と光の配管が脈打っていた。
床は定理格子でできており、式と詩と設計図が淡く発光しては、また書き換わる。
壁面には『名付け得ぬものは仕様外』と赤い注意文が点滅し、命令文の粒度を強制する。
「ウィトゲンシュタインのアトリエ、起動。プロジェクト:毘沙門天/修羅OS、並列改造。命令の粒度は厳密名詞指定、数値範囲明示、優先度付きで解釈。曖昧解釈は厳禁」




