167話 あなたの家来にしてください。
167話 あなたの家来にしてください。
「そうだな……」
霊体センは、セミディアベルの言葉に頷いてから、
「マジで、もう、無理っすねっ」
唐突に声色を変えた。
わざとらしいほど殊勝な調子で、
「さすがに、ここまで徹底的にメタられてしまうと……どうしようもないっ。お手上げっ」
霊体なので手はあげられないが、
声音でしっかりと、バンザイを表現しつつ、
「セミディアベル様。どうか、俺を、あなた様の家来にしてください。俺は17番なんかよりも、はるかに優秀ですよ。ということで、17番ではなく俺を配下にしようじゃありませんか。17番なんて、使えない、使えない。あんなもんは、即座にポイして、俺を配下にしましょう。ということで、17番の肉体に俺を差し込んでください」
横で聞いていた17番は、呆れ交じりに、目を細めて、
(マジかよ……センエース……その状態になって、まだ……)
「ふ、ふふ……ふふふ」
セミディアベルの肩が揺れる。
笑っているが、そこに『本気の感心』という感動が滲んでいた。
敵意でも憐憫でもなく、純粋な敬愛に突き動かされた笑い。
「なにがおかしいのですか、セミディアベル公爵。いえ、セミディアベル公爵閣下様!」
「すごいねぇ……こんな状態になっても、まだ、1ミリも諦めないんだねぇ。なんでなんだろうね。不思議だね。諦めてしまった方が絶対に楽なのに……なんで……君は……ふふ」
セミディアベルの声には、愉悦と同時に、確かな戦慄が混じっていた。
「仮に……今、17番の身体に戻って、108京の出力を手に入れたとしても……ああ、いや、君があの身体に戻れば、毘沙門天が稼働するようになるから、もっと出力は上がるけれど……まあ、でも、そういう細かい話はいったん置いておいて……仮に、君が、『それなりの数値』を手に入れたとしても、私には勝てないだろう? 自分で言うのもなんだけれど、私は反則みたいな存在だよ。指先一つで、この世界の設定を変えることができる。ほとんど神みたいな存在。そんな私に……歯向かう意味はあるかい?」
「ないですねっ。というわけで、さあ、俺を17番の身体に戻してください。反抗なんてしませんので! その証拠として、体を手に入れたと同時に、あなた様のクツをなめます! そして、今後の主食にいたします! というわけで、さあ!」
「……ふふふ」
楽しそうに笑ってから、
「君が考えていることを当てようか。……先ほどのステータスいじりで、私はエルファの存在値を1京弱から10京にしか底上げできなかった。そこから、私の『G‐クリエイション・蝉』にも限界があると予測したのだろう?」




