165話 最優先に決まっている。
165話 最優先に決まっている。
「決めているんじゃない。経験則を口にしているんだ。……ボクは9番が助かる可能性の高い道を選ぶ」
17番の声音は淡々としていたが、その眼の奥には諦念と固い覚悟が滲んでいた。
センが苛立ちを込めて霊体のまま吠える一方で、
17番は冷静にエグゾギアを起動する。
黒煙を噴き上げながら装甲が展開し、仮想の筋肉を包み込む。
白炎の尾が床を舐め、空気をビリビリと裂いた。
しかし――
「やっぱり、毘沙門天が使えない。この状態での最大出力は38京ぐらいか。だいぶ落ちるな。……毘沙門天の剣翼……この武器の、センエースに対する想いは異常だな……気持ち悪いよ……正直いって。……思い返せば、ボクが自力で集めて使っていた時も、なんだかギクシャクしていた気がする。……毘沙門天からは、『いやだけど仕方なく手を貸してやる』みたいな雰囲気をいつも感じていた」
掌に感じる出力は確かに膨大だが、どこかに『欠落』があった。
武器そのものが主人を拒むような感覚。
そこで、センがダルそうに、ボソっと、
「……いまさらどうでもいいことではあるが、17番……やっぱり、お前も毘沙門天パーツを集めていたのか」
「うん、もちろん。最優先でしょ。30個も集めないと使えないアイテムとか。絶対にすごいアイテムなんだから」
「……」
「エルファも殺したよ。『山ほど繰り返したタイムリープで稼いだ経験値』が膨大だったから、そこまで難しくなかったよ。サタンソウルゲートは使わなかったけどね。過去のデータを見る限り、何度かちょこちょこ使っていたようだけど……使用時間に関しては一カ月とか、二カ月とかが限界だった感じかな」
「……お前、実際、どのぐらい強くなったんだ?」
「15京ぐらいだよ。それで、セミディアベル公爵のプランAに負けたんだ。で、もう無理だって思った。指先一つで30京になれる人に勝てるわけがないでしょ。何回繰り返したって意味ないよ。ギャンブルってのは、運営側が勝つようになっているんだから。所詮、ボクはただのプレイヤー。勝ち目のないゲームからは降りるのが最も賢い選択」
「……」
「裏切って良かったよ。プランAの段階でも詰みだったのに、まだその先のプランBがあるっぽいからね。セミディアベル公爵は、たぶん、無限に強くなれるんだ。酷い話だけど……それが社会の仕組みだっていうなら、歯車として従うしかない」
「仮に無限に強くなったとしても、俺なら殺せる。もういちど、体をよこせ」




