163話 排出。
163話 排出。
(魂魄交換の聖水を飲んで俺と替われ)
「言われなくても飲むさ」
そう言って、17番は、アイテムボックスから、小瓶を取り出すと、迷いなくグイっと飲み干した。
すると、その瞬間、17番の身体から、ボワっと、『霊体状態のセンエース』が外に排出された。
17番の体から出た霊体センエースは、
「――おいおい……お前、これ、まさか……『副人格排出薬』を飲んだのか?」
「うん。だって、ここまでがセミディアベル公爵のプランゼロだからね」
★
一つ前の周。
17番がタイムリープする前。
――セミディアベルと17番の対話。
『17番。記憶ありでタイムリープさせるから、過去にいったらすぐ、魂魄交換の薬を飲んで、センエースと入れ替わるんだ。いいね』
『センエース?』
『君の中にいるモンジンのことだ。本名はセンエース」
『……』
『この世界において、私は、一々、銀の鍵を使わずとも、【全ての時間軸における私】に【最新の記憶を同期させること】ができる。私は常に、全てを知った上で、君を監視している。おかしなことをすればすぐに分かるからね。その点だけは、重々、留意しておくように。ま、別に、どうしても、おかしなことがしたいなら好きにしてくれればいいんだけどね。その時は9番を凄惨に殺すだけだから。わかったかな、17番』
『…………ボクの中のモンジンが言っている。【やるなら、今やろう。殺してやる、セミディアベル】……と」
『違う違う、違うよ、センエース。私は君と戦いたいわけじゃない。これは君を殺すための作戦だ』
『……』
『17番……もういい加減、ゼンドートのヤバさは理解できただろう? 私の恐ろしさも理解できたはずだ。私たちを殺すことは非常に難しい。そこで、君に取引の提案だ。センエースを殺すのに協力してくれたら、君と9番の安全を保障しよう』
『あんたみたいな悪人の中の悪人の言うことを信用しろってのは、流石に無理があると思うんだけど……』
『悪人の中の悪人だからこそ、取引には誠実なんだよ。そこらのチンピラの口約束とはわけが違う。宇宙一の悪である私が君ごときを安く騙したりはしない。もっといえば、【対センエース戦における協力者】に対して、私は神よりも誠実な男になる。なぜなら、君を騙すことなんかよりも、センエースを殺すことの方がよっぽど大事だから』
『……』
『――協力してくれれば、死ぬのはセンエースだけだ。君と9番の平穏な生活は守られる。その約束だけは死んでも守ると、私の名前に賭けて誓おう。……さ、どうする17番』




