162話 裏切り……だと……?
162話 裏切り……だと……?
「ごちゃごちゃうるせぇ! とりま、お前ら、どっちもウザすぎるから、とにかく、死ねぇえええ!! 汚物は消毒、消毒ぅう!!」
そう言いながら、センは、二人を殺そうと全身にブーストをかけようとした……
が、そこで、
「うっ!」
センの身体に異常が起きる。
「な、なんだ……」
と困惑していると、
センの中にいる17番が、
(タイムリミットだ、センエース)
ボソっとそう言った。
すると、グググっとセンの意識が薄くなっていく。
そして、一瞬だけ途切れたが、すぐに、
(ん?! あれ? ん?! なんだ、どうなっている?! うごけねぇ!)
「今の君は、前と同じで、『霊体の副人格』になっているから、何もできないよ。これまでのボクと同じでね」
(おい、どういうつもりだ、17番)
「どういうつもりって……最初からこうするつもりだったんだよ。ボクが飲んだ『魂魄交換の聖水』は、時間経過で元に戻るように設定されていた。偉そうに言っているけれど、設定したのはボクじゃなくて、セミディアベル公爵だけどね。ボクは、セミディアベル公爵とゼンドート伯爵の犬でしかない」
(……9番を助けたいんじゃなかったのか?)
「そうだよ。だから、犬になることを選んだ」
そこで、17番は、セミディアベルに視線を向けて、
「人類を絶滅させても、9番だけは殺さない……そういう約束でしたよね」
「ああ。もちろん、『彼女』……ぃや、『彼』だけは殺していない。そういう約束だからね」
「もし、9番に危害を加えたら、『センエースが鍛えたエグゾギア』をフル稼働させて、最後の最後まで暴れます。けど、9番さえ無事なら……ボクは、永遠に、あなたに対して忠実な犬となる」
「フル稼働はできないんじゃないかな? おそらく、毘沙門天の剣翼を起動することができなくなっているはずだ。あれは、センエース以外だと正式には使えないから。今の君は、センエースと心を連携させることができない。だから、動かせないはず」
「ぇ……あ、本当だ。起動できない……ま、まあ、でも、エグゾギアだけでも、十分な出力を出せますよ。あなたの脅威になることぐらいはできる」
「もちろん、わかっているとも。安心してくれ。何度も念を押さなくとも、9番には手を出さない。出したくても出せないんだよ。誇りに誓ってしまったからね」
「……ありがとうございます」
そこで、『それまで様子をうかがっていたセン』が、
(おい、17番。わざわざ、セミディアベルやゼンドートにシッポを振らなくても、俺なら、そいつらを殺せたんだぞ。いまからでも遅くないから、魂魄交換の聖水を飲んで俺と替われ)




