161話 何が嫌いかを口にした分だけ程度が下がる……気がしないでもない。
161話 何が嫌いかを口にした分だけ程度が下がる……気がしないでもない。
「なろう系の小説でもそうだろう? ステータス無限って言い張れば、それで万事解決。それで最強。それで無敵。……簡単な話だね。滑稽な話とも言えるけれど」
「……なろう系……ねぇ……」
「なろう的な力を得ておいてなんだけれど……私は、なろう系が心底嫌いだよ。低品質の脆弱な家畜(社会的弱者)が、偶然手に入れたチートを振りかざして膨大な恩恵を得る……ありえない話……いや、あってはいけない話だ。そんなものを読んで満たされる読者が嫌いだし、そんなものを描いている作者も嫌いだし、そんなものを許容する世界も嫌いだ。とにもかくにも気持ちが悪い」
「……なろう系をバカにすれば自分の格が上がると思っている風潮の方が、よっぽど気持ち悪い」
「ふふふ」
セミディアベルは含みのある笑みを浮かべてから、
「それはそうと……まだまだ足りないから、プランBもやっちゃうね」
そう言いながら、また指を動かそうとするセミディアベル。
センは、
「……おっと、さすがに、これ以上は勘弁願おうか」
そう言いながら、爆速ダッシュでセミディアベルとの距離を詰めて、
セミディアベルの顔面を吹っ飛ばそうと、閃拳を放った。
が、そこで、ゼンドートがカットに入る。
セミディアベルを守ろうとして……という形ではなく、『セミディアベルにヘイトが向かっているのをいいことに死角から突撃をぶちかました』という感じ。
「うぉっと!!」
ギリギリのところで、ゼンドートの突進を回避したセンは、
「邪魔するんじゃねぇよ、正義バカ!」
そう言いながら、一瞬でゼンドートを制圧しようと、
グンと加速した……が、
そんなセンの動きに、ゼンドートは即応してきた。
「正義バカ……まあ、悪くない言葉だね。バカという言葉のニュアンスの中には、一筋という意味もある。事実として、僕は正義一筋……絶対に間違わない審判の剣」
バババババババと、
ドラゴンボ〇ルでよく見る連打の応酬。
20秒ほど連打しあってから、
バっと、勢いよく距離をとる両者。
軽く肩で息をしながら、センは、
「おいおい、ふざけんな。お前、携帯ドラゴンを装備しただけなのに、戦闘力が跳ね上がってんじゃねぇか。そんなワケあってたまるか」
そんなセンの文句に、
セミディアベルが、いったん『蝉』をふところにしまいながら、
「その辺、説明が難しいんだけどねぇ……エルファの本来の戦闘力を、マフツノカガミでコピーして……いや、コピーっていうか、矯正転写? んー……いや、いいや。忘れて。難しいや、この辺の説明。ちゃんと詳しく説明しようとすると、言っちゃいけないことも言わないといけないし」




