158話 とてもとても長い長い旅路を外から見るテスト。
158話 とてもとても長い長い旅路を外から見るテスト。
「……なるほど。説明書通りだな」
サタンソウルゲート内のエルファは、意思を持たず、ただ無意識に戦闘するだけのロボットのようなもの。
そう説明書に書かれていたが、実際、その通りだった。
「これから、9兆年……俺はお前と殺し合い続けるわけだ。そんな濃密な時間を過ごしてしまえば、さすがに愛が産まれちゃうぜ。そう思わないか、ベイベ」
とファントムに声をかけるが、当然、エルファは一切反応しない。
ただ立ち、ただ待ち、ただ敵を迎え撃つために存在している。
「つまんねぇ人形だ。ま、べらべら喋られたら、それはそれでしんどいが」
肩をすくめつつ、センはエグゾギアを起動して、武を構えた。
視線の奥に、炎のような執念が宿る。
「じゃあ、始めようか。これからの9兆年の中で、おそらく、お前のことを、5000兆回ぐらい殺すことになると思うけど……恨んでくれるなよ。いや、やっぱ、恨んでくれていいや。流石の俺も、『自分のことを5000兆回も殺した相手を許せ』なんてトチ狂ったことは言えねぇ」
白い無限の舞台に、血と殺意の旅路が刻まれ始めた。
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「――心配するな、17番。説明書に書いてあったが、副人格はソウルゲートを体験できないらしい。だから、お前は9兆年も頑張る必要はない。やるのは俺だけだ」
(君が灰になったらボクも死ぬ!)
「たかが9兆年で灰になるほどヒマじゃねぇよ」
(ヒマかどうかは誰も聞いてないね!)
――その瞬間、ゲートが開く。
空間が裏返り、景色が万華鏡のように砕け散る。
……と、『センの中にいる17番』が、そう感じた直後、
(……ん?)
世界が一瞬で元に戻った。
風景には何の違いもない。
ただ一つ違うのは、センエースから感じる圧力。
その立ち姿は変わらないはずなのに、呼吸ひとつ、まばたきひとつに『確かな重み』がにじみ出ていた。
声はざらつき、瞳は砂漠を思わせる乾きと灼熱を孕んでいる。
「……長い旅だったぜ……」
センは天をあおぎながら、深く息をついて、
「9兆年……ずぅっと、エルファと殺し合っていた」
などとブツブツ言っているセンに、
17番は、おずおずと、
(え、ほ、本当に……9兆年……やりきったの?)
「俺が今まで、一度でも嘘をついたことがあったか?」
(……嘘かどうかはともかく、君って基本的には、ずっとテキトーなことばかり言っている印象だね)
「じゃあ、これを見てみな……テキトーな戯言かどうかは、それで判断できるだろう」
そう言いながら、センはエグゾギアを起動させた。