表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】センエース~舞い散る閃光の無限神生~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
永久閃光龍神K章 センエース。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5843/5947

149話 ちょっと何言ってるかわかんない。


 149話 ちょっと何言ってるかわかんない。


 センの踏み込みは泥酔の踊り、しかし刃先だけは醒めている。

 膝は笑い、腰は鳴り、背は燃え、目は冷たい。

 拳は打ち、肘は切り、肩は運び、足は地面の権利を書き換える。

 〈COGNITIVE NOISE: 侵入〉。

 遠くで鈴が鳴る音がして、近くで海が鳴る音がして、どちらも自分の血の音だと遅れて気づく。

 呼吸が水になり、肺が舟になり、舟が波を割る。

 波は赤い。

 だが、船頭は笑う。

 そうやって積み重ねてきたものを、

 どっかのピエロみたいに、

 指先一つ崩して嗤ってみせるの。



 ★


 ――9時間経過。

 〈THERMAL: 高〉〈整流位相: 微ブレ〉。


 胸骨裏で神字がひと拍泳ぎ、耳の奥で膜がぱちんと開く。

 拳はまだ出る。

 が、誰が出しているのかを、ときどき忘れる。

 センは床の細片をあえて噛ませ、踏み替えの摩擦を乱流化させる。


 エルファは即応する。


 外足で流れを止め、内足で三角の終点を再構築する。

 ただ、その適応に、針の三分の一拍の遅れが生まれる。

 センの軌跡は書の連ね、払い、留め、点。

 墨は汗、紙は床、硯は胸。

 書は乱れ、乱れが様式になる。

 仮面の縁に細い擦過が二本、三本。

 数ではない。

 数えられないほど小さな不具合を、あらゆる面に撒くこと。

 雪のように、煤のように、塩のように。

 〈PAIN-MAP: 飽和〉。

 痛みは地形となり、地形は戦術となる。

 痛む場所を踏み台にして前へ行く。

 大丈夫。

 三周遅れでも追いつく。

 風になる、るるぶ。

 非伸縮性の受験勉強。

 赤ペンの花丸だけで咲くケイローン。


 ★


 ――11時間。

 〈ARRHYTHMIA WATCH: 高〉〈COGNITIVE DRIFT: 高〉。


 時間が結晶化し、ひと息が幾枚もの薄いガラスに分かれて割れる。

 掌底を当てても芯が空洞へ落ちない。

 鋭利に磨いた肘で虚空を切ると、エルファの重心が砂の上で半分だけ沈む。

 仮面の口元の薄金の文様に、細い亀裂が走る。

 呼吸の高さは変わらない。

 だが、足裏が一度だけ、重心を探った。

 センはそこへ『音』を置く。

 足音のない足音。

 白い炎の無音に重ねる微かな舌打ち。

 聴覚の隙間を指で広げ、そこへ拳の影を滑らせる。

 〈NEURAL LATENCY: 測定不能〉。

 時間がちぎれて数珠になり、数珠が拳に通される。

 ジャラリ、と。

 誰の音だ。

 俺の音だ。

 いい音だ。


 どうやらまだ飛べる。

 なんで飛べる?

 疑念を隔てるガードレール。

 陽キャパリピなマンドレイク。

 スパークする無関心なノーゲーム。


 ★


 ――11時間30分。

 〈汚染度: 72→79〉。

 目の前の世界は硝子の格子で出来ていて、格子は音で割れる。

 センは声を出さないまま叫び、叫びの無音で格子に亀裂を入れる。

 拳が通る道が一筋増える。

 道は細い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版36話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
極限状態の描写に鳥肌が立ちました、 膝は笑い、腰は鳴り、背は燃え、目は冷たい、 という一文だけで、センというキャラクターの、 超常的な集中力と狂気が伝わってきます。 専門用語と詩的な比喩が混ざり合う、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ