139話 必要経験値が多いなぁ……
139話 必要経験値が多いなぁ……
歓喜で疲れが吹っ飛んだ……
なんてことはないが、
気力はほんの少しだけ回復した。
センはさっそくコアを胸部に装着して、
残っている経験値の全部を稼働時間強化にブッ込んだ。
その結果、最大稼働時間が5分から25分に伸びた。
〈AEG-CORE ONLINE/RUNTIME MAX: 25:00〉
コアに刻まれた神字が一度だけ明滅し、喉の金属味が濃くなる。
長く回せる代わりに、請求書も厚い。
「……稼働時間を伸ばすために必要な経験値がハンパじゃねぇ。時間だけ伸ばしても、継戦能力が増えるだけで、最大出力は上がらない。存在値を上げつつ、時間も伸ばす。……この先、経験値振りのバランスを考えていかないとな……」
こういうことを考えている時間は楽しい。
それは事実。
ただ、疲れているのも事実。
無数の現実と向き合いながら、
さらに、センは、塔魔王戦を継続していく。
★
50体目の魔王を倒した段階で、
センエースの存在値は980兆。
塔魔王の存在値は2300兆。
センは経験値の8割ぐらいを稼働時間にぶち込んで、
『継続戦闘能力を高めて、なるべくアスクレピオスを使わないようにする』
という、作戦で塔魔王攻略を進めていた。
ゆえに、塔魔王との存在値の差がだんだん開いてきている。
もし、稼働時間の増加を無視して、火力増加にだけ振っていれば、トントンだったと思われる。
〈AEG-CORE ONLINE/RUNTIME MAX: 05:33:55/REMAIN: 00:02:12〉
「深淵閃風!!」
センは、水面蹴りで、塔魔王の足を払うと、
「逆気閃拳!!」
塔魔王の胸部に向けて、捻転重視の拳をブチ込んでいく。
「ぐぎゃぉおおお!」
悲鳴はあげるものの、しかし、魔王の体力はまだまだ残っている!
「くそぼけがぁああああ!!! 体力多すぎるだろぉおお! 何回殴れば死ぬんだよぉおお! 時間ばっかりとりやがって、くそがぁああ! やべぇ、あと2分! やばいやばいやばい!!」
残り時間がヤバくなって焦るセン。
とにかく全力連打を繰り出すが、魔王は元気に反撃してくる。
「ああ、もう、くそお! しんどいから、使いたくないのにぃい!! ――サイコジョォオカァアアア!!」
〈PSYCHO JOKER:起動/出力上昇・痛覚倍化・短時間・反動大〉
種別:精神過燃ブースト機構/AEG拡張アルゴリズム(神字同期)
目的:短時間の戦闘出力と反応性の極大化(討ち切り用)
・効果(オン時)
出力ブースト:運動単位再動員↑/運動誘発電位(MEP)振幅↑/筋収縮速度↑
反応:皮質‐脊髄路の伝導遅延短縮/選択反応時間↓/運動計画の潜時短縮
感覚マップ:痛覚再符号化(ノシセプションを動因へ転写)/恐怖反応の扁桃体過駆動→行動化




