137話 辛いよ……つらいよ……ツライヨォ……
137話 辛いよ……つらいよ……ツライヨォ……
現状は、利息すら追いつかない、地獄のリボ払い。
それでも無限に借金をつづける、賭博黙示録が過ぎる閃光。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ」
肺の奥が紙やすりみたいに擦れ、吸うたびに胸郭が砂利を噛む。
心拍変動は痩せ細り、期外収縮が不意に跳ねる。
指先は微細振戦。
掌の汗は冷たい。
眼は虚ろ――視界の縁がトンネル化し、音が遠い。
四肢は鉛。
神経筋接合部で火花が尽きかける。
文字通りの意味で死にかけているシナプス。
終板電位が萎み上がって、伝達効率が落ちる。
グリコーゲンの在庫はとうにカラ。
思考の刃もドロっと鈍って、
遂行機能が砂漏れのように欠けていく。
心も体もとことんすり減らして、
それでも、センエースは、
「……閃拳……」
魔王の顔面に、狂気の一撃を叩き込む。
疲れ切っている人間の拳とは思えない。
宇宙を殺す事も不可能ではないと思わせる威圧感。
「ぐがぁあああああ!!」
断末魔をあげて倒れる魔王。
いつものように宝箱に変化する。
センは、這うようにして、宝箱の元に辿り着く。
と、そこで、ガクっと膝が抜けて転倒。
支えようとした手も重たくて動かず、額が宝箱に衝突。
「……痛ぇよぉ……辛いよぉ……なんで、俺がこんな目に……」
冗談っぽく……
けれど、実は本音の弱音。
「はぁ……はぁ……」
無敵でも無限でもない。
実際はただの人間。
ただ歯を食いしばっているだけの弱い生命。
「……まだだ……」
それでも叫び続ける勇気の意味を、
当人ですら、本当のところは理解できていない。
理解など必要ない。
覚悟に意味を求めるなど無粋。
センは、どうにか踏ん張って、
なんとか宝箱を押し開ける。
いつも通り、中にはカギがあるだけだろう……
そう思っていたセン……だが、
「ん?」
中には、カギと、『コアみたいな何か』と『説明書』があった。
センは、説明書を手にとって中を確認してみた。
「……『エグゾギア-コア』……エグゾギアの改造パターンが増える強化パーツ……」
『エグゾギア‐コア(AEG-CORE)』取扱仕様抜粋。
型番:AEG-CORE / Black-Lamina
適合:胸骨前方〈神字刻印 v2.1+〉/受電層3層機(AEG v4.0+)
相性:アスクレピオス回復魔法〈蛇の慈悲 v3.2+〉
概要
AEG本体の連続稼働上限(タイマー天井)を拡張する追加コア。
瞬間出力・反応は不変。
内部の〈伏素構成カイゾロイド・アクチュエーター〉熱余裕と〈神字整流〉位相マージンを増設し、『回していられる時間』だけを伸ばす設計。
成長仕様:経験値の追加投資と適合調整により、段階的にさらに延伸(理論上の上限なし)。




