135話 体の支え方を忘れていく。
135話 体の支え方を忘れていく。
「興味深いデータだな。ちなみに、そのことを黙っていた理由は?」
(黙っていたんじゃないよ。『未来人として君に伝えなきゃいけないこと』が多すぎて対応できていないだけだ。ボクが受けたテストの結果はいつも50点前後。バカ公立の中間テストで、ある程度マジメに勉強して50点しか取れない人間に『100点満点の対応』を求めないでくれ)
「バカってのは便利だな。どんなミスも、全て、『先天的な脳のせい』にできて」
★
そこから先、センは、
魔王を倒し、カギをゲットして、
扉に戻り、カギをさして、
また塔に戻り、魔王を倒し、カギをゲットして、
エグゾギアの稼働限界がきたら蛇の慈悲を使う……
――というのを何度も繰り返した。
言うまでもなく、当然、『体力の限界』はとっくに超えている。
指先は微細な振戦を刻み、末梢灌流は月蝕のように痩せてゆく。
口の中は鉄錆の味。
破れた毛細血管からこぼれた鉄分が、死と生の狭間で、しとやかな慟哭を反芻させる。
胸骨裏では期外収縮がひとつ、またひとつと、運命の拍子を狂わせる。
それは筋繊維の疲弊という次元ではなく、『生命維持』という根底の不協和音。
――心はまだ茹だっているが、脊柱起立筋が、体の支え方を忘れていく。
魂の奥で、『灯を絶やさぬための残り油』が、ひたひたと減っていく音が聞こえた。
「おらぁああ!! 神速閃拳!!」
それでも舞い続ける、狂気の閃光。
朦朧としながらも、心の底からの覇気を叫んで前を向き続ける。
――30体目の塔魔王撃破。
この尋常ならざる努力と偉業を前にして、
センの中にいる『17番』が、ボソっと、
(……なるほど……)
と、何かを飲み込むように、『納得』を口にした。
それに対し、センは、
「……なにが?」
疲れ切ってカスれた声。
センの問いに、17番は、間髪入れず、
(これは……怖いな)
「はぁ?」
(……センエース。一つ質問がある)
「なんだよ」
(そうやって、必死に磨き上げている力を、もし……理不尽に奪われたら……君はどうする?)
「奪われたらっつぅか……俺の現状が、おそらく、そうなんだが? 磨いてきた力と記憶を理不尽に奪われて、こうして、もがきあがき苦しんでいる」
(感想は聞いていないよ。どうするのかを聞いているんだ)
「今の俺の発言には一ミリも感想が含まれていなかったと思うが、まあいい。……どうするもクソもない。いまと同じだ。できることを全部やってどうにかする」
今週土曜日に、自作コミカライズ版35話を配信します!
それを記念して、今週の土曜日は一日10話投稿!
……よくこんなイカれた無茶を続けていられるな……と、改めて現状に引いておりますw
皆様、センエースを支えてくれてありがとう<m(__)m>




