132話 3000極。
132話 3000極。
「魔王との戦闘中は逃げられないから、戦闘中にタイムリミットになると、殺される可能性が普通にある」
カギ6本目ぐらいの時に、センは一度、戦闘中、外に逃げられるかどうか試してみたのだが、予想通り、魔王との戦闘が始まったら、扉は硬く閉ざされて、どんな攻撃をしても開けることができなかった。
「これまでの傾向的に、カギ100本を達成すれば、おそらく、コンプリートボーナスがもらえる。ゼンドートとの決戦に備えて、できれば、そのボーナスを取っておきたいんだが……」
そうつぶやくセンに、
17番が、
(今の君の存在値、52兆だよ。それだけあれば、ゼンドートに勝てる……とは思わないの?)
「お前はどう思うんだ? 実際に、ゼンドートと戦い敗れたお前の所見を聞かせてもらいたいな」
「……んー」
「ここまで、あえて聞いてこなかったが……満を持して尋ねようか。お前は、存在値をどのぐらいまで高めてゼンドートに挑んだ? タイムリープしまくって経験値をためにためたんなら、相当な数値になっているはずだよな?」
(……3000億)
「ん? ……3000『極』? 一十百千万億兆京垓秭穣溝澗正載極の極? お前、『極』までいったの? マジかよ、やるねぇ」
(……億だよ。一十百千万億の億)
「…………」
(…………なんだよ。なにか文句でも?)
「お前、タイムリープして、何してた? 部屋の掃除でもしてたのか?」
(存在値3000億って聞いたら、普通の人は、泡を吹いて倒れるものなんだよ)
「…………3000億……ふーむ……ふむ……」
そこで、センは、色々な想いを飲み込んだ上で、
誰にも届かない心の声で、ボソっと、
(……俺の予想だと、17番は毘沙門天を集めて、この塔にきている。何度も周回して、経験値をためた上で、毘沙門天を使えば、ここの魔王が相手でも殺すことは可能。……『今の俺と同じぐらいの数値』にまで高めることも、そんなに難しくないだろう……)
肉体の方は回復に集中し、
脳の方は、17番のコトをひたすらに考える。
(問題は、なぜ、そのことを俺に隠すのか。そして、隠すなら隠すで、この程度の秘密は、完璧に隠すことだって出来なくはないはずなのに、なぜ、ちょいちょい、『怪しさ』を見せつけてきて、俺の『疑いの目』が向くように仕向けてくるのか。……その行動の意図は、いったいなんなのか。……そのくせ、カマをかけると、しっかり、とってつけたような言い訳をしてくる始末。となると、17番の思惑としては、『疑ってはほしいけど、バレるのは嫌』ってことになる……なんじゃ、そりゃ。どういう状況だと、そんなことになるんだ……)




