131話 鬱陶しいマラソン。
131話 鬱陶しいマラソン。
「このマラソン、ダルいな……塔の中に、扉をセットしてくれよ……」
などとブツブツ言いながら、センは、扉の元に向かい、3本目のカギをさして、扉をくぐり、また、塔の元へと帰る。
中の構造は一緒だった。
出てくる敵も同じ。
違うのは強さだけ。
「今度は……存在値38億! 38倍! よしよし、流石に、上昇倍率は下がっていくよな。……50倍のままずっと上がり続けていたら、頭にパンツかぶってパラパラ踊るしか手がなかった」
(頭にパンツかぶってパラパラ踊ったら、魔王が50倍ずつ強くなり続けても、どうにかなるの?)
17番の素朴な質問に対し、
センは、
「量子は、一生波に乗っている陽キャのサーファーだからな。こっちが、そのノリに合わせていけば、何かしらが何かしらして、結果、忖度してくれんだろ! 知らんけどぉ!!」
そう言い捨てながら、エグゾギアを起動する。
さらに、
「こい! 毘沙門天!!」
毘沙門天を背中に顕現させた瞬間、
センの存在値がさらにドカンと跳ね上がる。
「今の俺の存在値は2兆8000億ぐらいだ。38億ぐらいじゃ、話にならないぜ」
★
――強くなり続ける魔王を殺してカギを獲得して扉をくぐる……そんなマラソンを、繰り返した結果、10本目ぐらいで、
「存在値……15兆か」
神眼モノクルに表示される数字を見て辟易するセン。
声に力がない。
ここまでの死闘で、すでに心がすり減っている。
「うらぁああああ!!」
気合いの入った一撃で、10本目の魔王も、なんとか撃破したセン。
エグゾギアを解除し、
その場でフラつきながら、
「……もうすでに、だいぶキツイんだが……まだ、90本残ってんのか……これ、完走できる気がしねぇなぁ……」
存在値が億や兆を超えている『おそろしく強い魔王』を殺し続けたことで、
センも、莫大な経験値を稼ぎ、だいぶ強くなった……が、
「今の段階で俺のMAX存在値は『52兆』ぐらい……俺もバカみたいに強くなっているが……成長速度で勝てる気がしない……」
肩で息をしつつ、
「俺自身の体力がやばいのはもちろんだが、なによりヤバいのは、エグゾギア稼働時間。最大5分は短すぎる」
センは、そう言いながら、アスクレピオスの杖を地面にブッ刺して、
『蛇の慈悲』の魔法を使いつつ、
座禅を組んで、体力の回復に全力で努めながら、
苦い顔で、
「……エグゾギアの残り稼働時間は数十秒。……今はまだ、魔王を、数秒で殺せているから呑気に周回できているが、今後、『魔王を倒すのに時間がかかるようになってくる』と……普通にやばい」




