130話 テンプレを天丼。
130話 テンプレを天丼。
魔王は、センを睨んだまま、
「私を殺せばカギが手に入る」
と、最初の時とまったく同じ言葉を口にする。
「うるせぇ、知ってるよ。さっき聞いたから。黙ってろ、カス。こっちは、今、それどころじゃねぇんだ」
「しかし、貴様では私を殺すことは不可能だろう」
「RPGの村人かよ。テンプレを天丼しやがって……」
「貴様は脆弱すぎる。たとえ、あの剣翼を使っても、私の相手は務まらない」
「お、ちょっとだけ変えてきたじゃねぇか。どうやら、ファミコン時代のAIよりは、多少、まともなCPUを積んでいるらしい」
などと言い捨ててから、
センは、
「とりあえず、殺すから……黙って3本目のカギを吐き出しな」
そこで、グっと奥歯をかみしめ、
『右腕に装着した腕輪』を『左手』で握りしめるポーズをとり、
「エグゾギア【魔王】……起動」
機動宣言の直後、センの頭が、妙な感覚で埋め尽くされていた。
膨大な量の数字、無限の文字列――が超高速で流れていく。
極めて機械的な音声。
最後に、
『――エグゾギア【魔王】、出撃準備完了――』
その声を最後に、センは、カっと目を開いた。
――視界の全てが完璧に良好。
なにもかもが、いつもよりもはるかに鋭く見える。
エグゾギアを纏ったセン……その威容は、まるで『聖なる白銀』に『原罪の闇』を煮詰めて溶かし込んだよう。
言葉を失うほど禍々しく、極悪で、凶悪で、絶悪な姿。
その全てが、ただ立っているだけで、大いなる災厄。
サイズは2メートル10センチほど――だが、その威圧感は、遠目には十数メートルの怪物と錯覚するほどだった。
「……参考までに、エグゾギアを着ている時の私の存在値をお教えしておきましょうか」
そう言いながら、センは、右手に、魔力とオーラをギュンヒュンに集めていく。
「今の私の存在値は……25億です」
★
エグゾギアで出力を底上げしている状態のセンにとって、
1億の魔王など屁でもなかった。
秒殺したのちに、エグゾギアを解除したセンは、
渋い顔で、天を見上げて、
「……1億ぐらいならエグゾギアで楽勝だけど……この先、マジで、50倍ずつ強くなっていくのかね? ……仮に、そうだとしたら、10本いく前に死ぬぞ……」
ぶつぶつ言いつつ、宝箱を蹴り上げる。
中身は、変わらずカギだった。
これで3本目。
「次の倍率で、今後が決まりそうだな……マジで次も50倍で、カギ100本分、強くなり続けたら……最後は……不可説不可説転を越えるよな……超えない? もう、わからん。『10の何十乗』とかになってくると、もう、さっぱりピンとこない」




