129話 この状況を見越して……
129話 この状況を見越して……
――中身を確認したセンは、
「塔の魔王だけではなく、ダンジョン魔王も、同じ倍率で強化されるのか……」
ぼりぼりと頭をかきながら、ぶつぶつと、
「……アバターラは所詮、俺の分身だから、やられても、『再出動のリキャストを待つだけ』だが……99番たちが、強化魔王に遭遇していたらやばかったな。……あいつらも、『最魔王化』したら、魔王と同じ強さになるから、いけるのか? いや、にしても、急に、敵が200万とかになったら、さすがに対応できないよな……困惑している間にスキをついて殺される気がする」
と、センが言ったところで、
センの中にいる17番が、ぽつりと、
(ね。休憩させておいて良かっただろ? ボクに感謝してね)
「…………どうもありがとうございます」
言いつつ、センは、誰にも届かない心の中で、
(なるほど……あいつらのことを頑なに休憩させようとしていたのは、この状況を見越してか……)
センは、『全員、しばらく待機』とメモを記してから、
リス型のマパネットを召喚し、
「アバターラに渡してきて」
と伝言をお願いする。
マパネットは、小さくコクっと頷くとすぐにシュンと消えた。
「さて……とりあえず、まずは、カギ2本でどうなるかを試そうか」
★
扉のところに戻って2本目の鍵をブッ刺して、巨大なドアを開けて中にはいるセン。
作業を終えてすぐ、外に出てみる。
周囲を確認し、
「パっと見たところ、塔の外に変化はないっぽいな……」
そうつぶやきつつ、
塔の中へと突撃していくセン。
塔の中の構造は、最初と全く同じ。
フロアの中央には玉座と、センをジっと睨んでいる、ガンギマった目の魔王。
姿かたち雰囲気、すべてが、さっき倒した魔王と瓜二つ。
(……似ている魔王か? ……いや、同じだな。微妙な挙動のクセが完全に一致している……)
センは、最初の時と同じく、神眼モノクルで、魔王の数値を確認した。
すると、
「……『存在値1億』……おいおいおい、倍率、エグいな。50倍も強くなってんじゃねぇか。金髪になった戦闘民族かよ。……てか、まだ2本目だぞ。え、このままの倍率で、カギ100本分強くなるってわけじゃねぇよな。3本目が50億で、4本目が2500億で5本目が12兆強とか……そんな感じで上がっていくわけじゃねぇよな……流石に……そうなったら、100本目の時、どうなる? 天文学的すぎて、計算できねぇよ」
などと、白目をむきそうになりながら、ぶつぶつと、文句をつぶやいていると、
魔王が玉座から立ち上がる。




