128話 秘密の奥義。
128話 秘密の奥義。
センは、あらん限りの『厨二』を、拳に注ぎ込んでいく。
「――貫くような銀河を見上げ、煌めく明日を奪い取る」
それは覚悟の証。
『おそろしくダサいポエム』を口ずさむという辱めを自ら執行する。
そのかわりに『上昇値・極大化』――という狂気のアリア・ギアス。
『あまりにも過酷な代償』ゆえ、恥も外聞もかなぐり捨てなくてはいけない。
全身の血潮が真っ赤に燃える。
「――さあ、詠おう。詠おうじゃないか。たゆたう銀河を彩りし、オボロゲな杯を献じながら」
羞恥心が大合唱。
だからこそ届く……エネルギーの強制活性。
「――俺は、センエース。神威の桜華を背負い舞う閃光!!」
宣言の直後、センエースの拳に、出力1万とは思えないパワーがみなぎる。
ギュンギュンと加速していく熱量。
「裏閃流秘奥義――龍閃崩拳!!!」
今の自分にできる『最強』を繰り出していく。
人知を遥かに超えた高み。
命を削って磨き上げてきた拳がうなる。
「がっはぁあああああああああ!」
魔王は、腹部を豪快殴打されて、盛大に吐血した。
咲き乱れる鮮血の華。
魔王は、白目をむいて、
そのまま、バタリと倒れこんだ。
そして、その死体が、すぅっと、『宝箱の形状』へと変形していく。
「強さはともかく、流れは、地下迷宮のダンジョン魔王と大差ねぇな」
そう言いながら、センは、宝箱を蹴り上げた。
中に入っていたのは、魔王が最初に言っていたとおり……カギだった。
「……最初にネタバレをくらっているから、ワクワク感もクソもねぇな」
などと言いつつ、センは手の中でカギを、ぽんぽんともてあそぶ。
「これで2本目……おそらくだが、ここで魔王を99体倒して、カギを合計100個あつめれば……最大報酬を得られる……みたいな感じだろうな。だろ、17番」
(だろって言われても、知らないけど……たぶん、そうなんじゃない? 流れ的に)
なんて会話をしていると、
そこで、センの肩に、リスに変身した魔王マパネットが現れて、
一枚の紙をソっとおいて、すぐにシュンと消えた。
この連絡手段にも、もう慣れたもので、センは、
マパネットに対して一切リアクションすることなく、
紙の中身を確認していく。
書かれている内容は以下の通り。
・ダンジョン魔王が急に異常なほど強くなった。
・あまりにも桁違いすぎて、今の俺でも瞬殺された。
・アイテムの効果で、マパネットたちは、『ダンジョン魔王と同じぐらい強さになれる』から、魔王をメインで戦えば、今後もダンジョン攻略はできると思う。
・この奇妙な現象の理由を知っているか?




