122話 お前はもう死んでいる。
122話 お前はもう死んでいる。
サメ魔王は、暴れ続けた。
どれだけ勝ち目がなくとも暴れて、暴れて、暴れて……そして、最後には死んだ。
魔王の死体をイスにしながら、センは頭をぽりぽりとかいて、
「交渉は出来そうにないなぁ……」
ぽつりとそうつぶやく。
「魔王といっても所詮はモンスターって感じかなぁ……」
などとつぶやいていると、
上空を飛行していたドラゴンタイプの魔王が、
ミサイルみたいに、センの頭上へと突撃してきた。
事前に、魔王の突撃を察知していたセンはスルリと回避する。
ドラゴン魔王のダイブで、サメ魔王の死体が吹っ飛んだ。
だいぶ豪快な一幕だが、
センは、アクビを一つはさんで、
「ダラダラと、ザコの相手をしているヒマはないんでね……瞬殺させてもらった。悪く思うな」
そう言って、センは、
『体勢を立て直そうとしているドラゴン魔王』に背を向けて、
すたすたと歩きだす。
「そこの下等生物ぅ! 私の攻撃を避けたのは褒めてやるが、しかし、生かしては帰さん!」
『逃がすまい』と、追いかける姿勢をとったところで、ドラゴン魔王は、ようやく気づいた。
――自分の胸部に風穴があいていること。
「が……ぁあ……」
センは、ドラゴンダイブを避ける間際、カウンターの拳をぶち込んでいた。
あまりにも速く鋭利な正拳突きだったため、
ドラゴン魔王は、自分が致命の一撃をもらったことにも気づいていなかった。
「お前はもう死んでいる。……汚物は消毒だ」
軽口を残しつつ、
センは、ダッシュで、周囲の散策を開始する。
★
散策中、ずっと、四方八方から魔王が襲い掛かってきた。
大量にエンカウントする魔王どもを、
コバエでもシバくかのように、次から次へと殺していく。
何度か、交渉を試みたが、
魔王どもは聞く耳を一切もたない。
まるで、そういう風に設計されているかのように、
ただひたすらに、センが視界に入ると襲い掛かってきて、
そして、最後の最後まで暴れ続ける。
言動に、多少の違いはあるものの、
『目についた人間を執拗に殺そうとする』という点に関しては、
どの魔王も、判をついたように同じだった。
この特質は、ダンジョン魔王も同じ。
――魔王とは、そういうものなのだろう。
『そう結論付けて以降のセン』は、
もう無駄な交渉はせずに、襲い掛かってくる魔王を、
グッチャグッチャとブチ殺しながら、
何かないかと探し続ける。
「……なんもないのか? なんもないなんてことがある? ……このエリアは、毘沙門天の剣翼を完成させたボーナスなんだよな?」




