121話 面白い冗談。
121話 面白い冗談。
「指輪でファストトラベルするときの中継地点……みたいな感じかな」
などとつぶやきつつ、
視点を変えれば、遠くに森や海らしきものも見える。
さらに視点を変えてみると、
「あっちに巨大都市ユウガがある感じか……」
かなり遠くに、だいぶ小さい巨大都市のシルエットが見える。
「この感じだと……10キロ以上は離れてんのかね……」
などとつぶやいていると、
そこで、
「……よく、こんなところまで、来ることができたな」
背後から声をかけられた。
振り返ると、
莫大なオーラを払っている『サメの擬人化』みたいな怪物が立っていた。
その存在値は500。
一目で魔王と分かる。
異様に膨れた二の腕、冷たいエラ呼吸音、濡れたような灰色の肌。
その全身から発せられる覇気は、間違いなく魔王のものだった。
そのサメ魔王は、
獲物を品定めするように、
センをじっくりとナメるように見て、
「ほんとうに……そんなカスみたいな力で、よくも、まあ、ここまで来られたな。お前みたいな雑魚は、『巨大都市(結界で守られた領域)』の外に一歩でも出た瞬間に、『都市の周囲を囲っている魔王ども』に狩り殺されるはずだが」
と、そんな風にいいつつ、じりじりと近づいてくる。
まるで、『トンボを捕まえようとしている子供』みたいに、そろり、そろりと。
そんなサメ魔王に、センは、
「お前、この辺について詳しいか? もし土地勘があるなら、色々と穴場スポットを案内してほしいんだけど」
「ははは。面白い冗談だ」
「俺にしては珍しく、一文字たりともボケていなかったんだがなぁ……」
「貴様は死ぬ。ここで。私に殺されて」
「ふぅん。ちなみになんで俺を殺す? 俺を殺して、あんたにメリットある?」
「ただの暇つぶしにメリットもクソもない」
「なるほど……梱包のプチプチを潰す感覚ってことね。なるほど、なるほど。あるいは、『退屈している家猫』が『ネズミ』を追いかけまわす感じ?」
「……おかしな人間だな。恐怖をまるで感じない。貴様は、なぜ、私を恐れない?」
「蚊を恐れる人間はいない。マラリアでも持ってりゃ話は別だが、ただの蚊ならシバいて終わりだからな。血を吸われたらかゆくてウザイが、あくまでもウザイだけ」
そう言いってから、
センは、両手をフリーにして、
「行くぞ、虫ケラ。――『ぜひ、わたくしめに周囲を案内させてください』と土下座するまでブン殴ってやるよ」
★
ボッコボコにされたサメ魔王だったが、
しかし、最後の最後まで、
「うぅういいいいいい! くそがあああ! 死ねぇええ!」




