119話 進入禁止エリア。
119話 進入禁止エリア。
「うるせぇよ、しつけぇな。……わかった、わかった」
ため息をつきながら、センは地上へと戻った。
★
地上に出てから、センは、
自分の分身であるアバターラ以外のメンバーに、
8時間ほどの睡眠命令を出してから、
――人気のない路地裏に入り込んで、
「さて、それじゃあ、進入禁止エリアとやらに行ってみようか……」
(ああ、行こう)
「……」
(なに?)
「いや、別に……ただ、『99番たちの過労死には敏感な心配性』のくせに、『俺が危ない場所にいくこと』に対する心配は一切ないんだなぁ、と思っただけさ」
(君の心配なんかしない。ここまで見てきたから分かっている。君を殺せる可能性があるとしたら、それは、ゼンドートだけだ)
「……まるで、『外に、ゼンドート以上の化物はいない』と確信しているみたいな言い回しだな」
(ゼンドート以上の化物なんかいるワケないだろ。仮に、その禁止エリアとやらに、なにか特別な魔王とかがいたとしても、ゼンドート以上っていうのは絶対にありえない)
「……」
(ボクは、君とゼンドートの二人を良く知っている。仮に、ボクが止めたとしても、君は聞く耳をもたないだろう。さっきは『他人の命』のことだったから、多少は耳を傾けてくれたけど、君は自分の命のことになると、とたんに冷酷になる。……だから、止めないだけ。止めないのではなく、止める意味がないと言った方が正確かな。止めてほしいなら、そう言ってよ。ボクだって、危険な場所に行ってほしくない。君が死んだらボクも死ぬんだから)
そこで、センは、『17番にも届かない心の声』で、ぽつりと、
(筋は通っている……が、変に通り過ぎていて、逆に台本くせぇ。まるで、事前に、反論を用意していたような……)
(ほかにもまだ、なにか?)
「いや、特にない」
そう言いつつ、センは、『17番に届かない心の声』で、ぽつりと、
(ただの杞憂か? それとも、17番は何かを隠している? 仮に隠しているとして、何を? 『ゼンドートがヤバい』って意見には俺も賛成だ。あいつが暴れ出すっていう話も、むしろ、ストンと胸に落ちる。あいつならやるだろう。そのぐらい。……そして、『17番が、本気になったゼンドートに勝てない』というのも……多分、嘘じゃない。俺も、ゼンドートの方が強いと思う。ゼンドートのハンパじゃない覇気は、初対面の時からずっと感じていた。あいつはマジでオーラがやべぇ。……では、17番の言動に嘘があるとして、どこの何が嘘だ?)




