118話 違和。
118話 違和。
「止めるんじゃねぇよ、17番。心配しなくても、外の魔王は、強化されまくったダンジョン魔王と違い、存在値500程度の雑魚。いまさら、そんなカスが何匹集まったところで俺を殺すことはできない」
(行くのを止める気はない。ただ、一回、外にでて、99番たちを休憩させた方がいい。外の面々も、ほとんど無休でダンジョンをかけずりまわっている。いくらなんでも働かせすぎだよ)
「俺は止めたさ。けど、あいつらがどうしても働きたいとせがむから、俺は仕方なく『タイムカードを切った上での残業』を許可しただけの話。すべてはあいつらの自由意志。俺は悪くない。責任はすべてあいつらにある」
(……『ブラック企業の社長ごっこ』をするのもいいけど、いい加減、休ませないと、過労死することだってありうるよ。タイムリープはもうできないってこと、忘れているわけじゃないよね?)
「……ずいぶんと、必死だな」
(強制労働させられる奴隷の気持ちは痛いほどにわかるからね。なんせ11年も、奴隷だったから)
「……たかが、一日二日そこら、夜通し働き続けたぐらいで、『鍛え込まれた人間』が死ぬわけがない」
(死なないとも限らないだろ)
「……『死なないとも限らない』だぁ? そりゃそうだ。誰だってそうだろ。元気な若者でも、脳梗塞で死ぬリスクはあるさ。けど、そんなこと言ったら何もできねぇ。ちなみに、家で休んでいても、隕石が落ちてきたら死ぬけど、そのリスクはどう考慮する? どこで何をしていたって、『死なない』と明言することはできねぇぞ」
(……)
「継続的に2年、3年と絶え間なくブラック勤務を続けてりゃ、そりゃ、どこかで過労死もするだろうが、現状だと、『名門の高校球児ぐらいの運動量』でしかないんだから、体力がある奴なら、そう簡単には死なない。カスみたいなこと言ってねぇで――」
(君も魔法を使って、9分間休んだだろう。だったら、せめて、他の連中も、9分ぐらいは休ませてやったらどうだ? ゼンドート討伐隊のリーダーは君だ。君だけが休んでよくて、他の連中が休んじゃいけない理由はなに?)
「俺は、山ほどの自傷系神器で負荷を――」
と反論しようとするセンに、
17番は、食い気味にで、
(それは君が勝手にやっていることだろう。もっといえば、君は耐えられるからやっているだけ。誰もかれもが強い肉体と不屈の精神を持ち合わせているわけじゃない。あと、さっき、隕石がどうこう言っていたけど、寝ずに駆けずり回って魔王と戦って死ぬ確率と、家に隕石が落ちてくる確率は全然違う。それに――)




