115話 いでよ、毘沙門天。
115話 いでよ、毘沙門天。
(君のコツって、それしかないの?)
「ああ。なんせ、ソレさえ押さえておけば、だいたいはどうとでもなるからな。少なくとも、『パニクっているパンピー』よりは、『冷静な狂人』の方が、尖った結果を出せるだろ」
センはそう言ってから、スっと立ち上がる。
「さて……それじゃあ、超回復も終わったことだし、毘沙門天パーツを回収しに行くか」
★
「終わりか? ……終わりだな……ふぅ」
ダンジョン魔王の死体が宝箱になったのを確認してから、
センは
「……まさか、第5形態まで変身するとは思っていなかった……が、特に問題なく魔王を撃破……これで、ようやくそろう……長かった。苦節数時間……あんなことやこんなことがあった。……とにもかくにも、これで、ようやく、念願の毘沙門天を拝める」
そう言いながら、センは宝箱を蹴り上げた。
まだ、『ミミックである可能性』や、
『17番の記憶違いである可能性』があったが、
しかし、
「……よし……30個目」
間違いなく毘沙門天パーツだった。
形状は三日月みたいな形をした厚みのあるジグソーパズルみたいな感じ。
表面はややざらつき、ところどころに微かな光沢が走っている。
だいぶ歪で、500円玉ぐらいのサイズ。
毘沙門天パーツの形状は、
一つ一つ、結構違っている。
――ちなみに、このダンジョンに入る前に、99番から、他チームが集めたパーツを回収済み。
現在、センの手元に30個すべてが集まっている。
「いでよ、毘沙門天、そして願いを叶えたまえ!」
そう言いながら、叫んでみるが、うんともすんとも。
空気が微かに重く、静寂が辺りを包み込む。
「おい、17番……どうなっている? まさか、ナメ○ク星人しか知らない秘密の暗号があるとか言わないだろうな」
(それ、パズルっぽいから、組み立てればいいんじゃない?)
「え、ダル……俺、『知能指数が必要系の試練』はNGな人なのに……」
(見た感じ、平面じゃなくて、立体パズルっぽいね)
「だるぅうう! 10○0年パズルかよ!! 無理だ! お手上げだ! もう諦めるしかない! 詰んだぁああ!!」
その声がわずかに震え、焦りが滲むのがわかる。
★
「……普通にムズいんですけどぉ……」
ブツブツ言いながら、センはパズルと向き合っていた。
詰んだからといって諦めるような男ではない。
むしろ、詰んでからが始まりだと思っている節がある。
(それが下じゃない? そのヘコんでいる部分を上にして――)
「うるせぇ。指図するな。俺は神の王だったかもしれない男。カラダと心は支配されても、誇りだけは思い通りにならんぞ」




