114話 論文だったら笑われるレベル。
114話 論文だったら笑われるレベル。
「前触れもなく……ねぇ」
(暴挙の理由を聞いても、『この世界の人間は死ぬべきだ』とか『みんな罪人で、自分だけが選定者』とか、完全にラリったことしか言わない典型的なジャンキー状態だった。普通に目が飛んでたよ)
「ソレに関しては『いつもそう』な気もするけどなぁ。……あいつは、常にイっちゃっている」
(何がどうしてこうなったとか……『繊細な原因』的なことは何もわからない。地震や津波みたいに、ある日突然人類に牙を向いた災害。それがゼンドートだよ。少なくともボクはそう認識している)
「なんのヒントもないのか? 何度もタイムリープして、その記録を確認しているんだろう?」
(ないよ。前にも言ったと思うけど、セミディアベルがゼンドートに何かを吹き込んだ……かもしれないってことぐらいしか分からない)
「何を吹き込んだんだろうな……」
(そんなの、どうでもいいよ。『ゼンドートが暴れる理由』が分かったところで、確実に意味はないから)
「確実に? ずいぶんと強い言葉を使うじゃないか。弱く見えるぞ。……ちなみに……その心は?」
(仮に、その原因を突き止めて、『今回だけ、ゼンドートが暴れないように調整』したとしても……そんなものは、ちょっとした時間稼ぎにしかならないだろうと思う。あの狂人は、結局、いつかは暴れる、絶対に。根本的に、異常だから。おそらく、キッカケなんか、なんだっていいんだよ。そもそも、そういう災害なんだと思う)
「断言調で結論付けたわりには、『おそらく』と『だろう』のオンパレードだな。論文だったら鼻で笑われるクオリティだぜ」
(………………)
「今度はなんの間だ?」
(君とゼンドートは似ている)
「ふふふ……まったく人をイライラさせるのがうまいヤツだ。はじめてですよ。この私を、ここまでコケにしたおバカさんは」
(……『絶対に揺るがない信念』を振りかざしてエゴを叫んでいる。……方向性が違うだけで、根っこは何も変わらない)
「根っこの話をするなら、全員一緒だぜ。雑草も薔薇も根は茶色で土にまみれている。もっと踏み込んでみれば、どいつもこいつも、『この世に存在する物質』っていうくくりに変わりはない。大事なのはどっちを向いているかであって、根っこが同じかどうかはどうでもいい」
(セン……きみって、レスバ強いよね)
「レスバの真髄を教えてやろうか? いかに冷静でイカレているか相手に理解させるのがコツだ」
(君のコツって、それしかないの?)




