112話 出世が止まらない。
112話 出世が止まらない。
と、悪役感全開の高笑いを残して、
アバターラは、トバヒトを担いで、その場から離脱した。
――そして、安全なところまで逃げた後、
『助かった、アバターラ……ありがとう』
呑気に感謝を口にしてきたトバヒトに、
『いやいや、おかげで、17番の評価がまた上がったよ』
『……は?』
『わざわざ、アイテムの試用と、かませ犬役を担ってくれて、こちらこそ、本当にありがたく思っているよ。ただ、もう、お前に用はないから、そろそろ、お休み』
そう言って、サクっと、トバヒトを植物人間にしてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。
★
こうして、トバヒトの助力もあり、
またも評価を爆稼ぎした17番は、
さらにワンランク上の漢になった。
要するに、伯爵へと昇進したのである。
『猿の17番伯爵とお呼び』
『センパイ、すごいですねぇ! こんな速度で出世した人、他にいないと思いますよ。ラストローズ辺境伯でも、さすがに、もっとゆっくり出世していたはずです』
『そこの庶民、もっと、お褒めなさい』
『センパイ、すごい! カッコイイ!』
『おほほほほほほほ!』
――家に帰って、9番相手に浮かれる17番。
17番の出世が止まらない!
★
『17日』の朝。
数日前から、都市内部では、謎の感染症が流行っていた。
『全身に謎の毒々しいアザができて激痛に苦しむ』という、『もの○け姫的な病』が蔓延していた。
『魔王が都市内部に入り込んだのが原因ではないか』……と言われているが、真偽のほどが一切不明。
みなが頭を抱えるその難題を解決してみせたのも、
当然、『猿の17番伯爵』。
飛ぶ鳥を落とす勢いの出世頭が、またしてもミラクルをぶちかましてくれた。
自慢のアイテム工房で作成した『探索機』を使い、
『病気が流行っている原因』を突き止めたのだ。
外周エリアのとある空き家にセットされていた『謎の悪魔像』が、
なんとびっくり、この病の原因だった。
おそらく、アバターラが仕掛けたのだろう。
なんて最低な野郎なんだ!
幸い、17番が早期に発見・破壊を達成したことで、
一人も死人を出すことなく、この騒ぎを収めることに成功。
――ちなみに、もちろん、全部マッチポンプである。
マパネットに病気をバラまかせて、『牡蛎の10番』にそれっぽい悪魔像を作成させた。
『どこぞの宮廷薬師もビックリな爆速完璧解決劇』を見て、
ラストローズ辺境伯は、また、17番を『アバターラとグルなのでは?』と怪しむが、
しかし、毎度のことながら、証拠が一切ないため詰め切ることができない。




