111話 ジェノサイドデス。
111話 ジェノサイドデス。
17番を殺せなかった理由は単純明快。
実は、17番も装備していたから。
――最魔王化できる覚醒武器『ジェノサイドデス』を。
『ジェノサイドデス』
『呼吸するように脈打つ刃』
『装備者は、一日に30分だけ【最魔王化(魔王と同等の肉体スペックを得る)】の魔法が使えるようになる』
『装備者の、自動回復適性・魔法剣士適性・万能適性を、超々々々大幅に引き上げる(当人のポテンシャル以上の力は得られない)』
『ああ、もう、くそぉおお! どうなってんだぁあああ!』
慇懃無礼を保つことすら出来ず、
ひたすらイライラしたまま、
17番と闘い続けたトバヒト。
それでも、タイムリミットのことを忘れてはいなかった。
30分を過ぎたら逃げようと思っていた。
『なぜか殺せない17番』に対して本気でイラついていたが、
ギリギリのところで、冷静さを保っていた。
……が、
『……ぇ、あれ……?』
30分が経過し、
逃走経路をチラと確認したところで、
タイムリミットがきて、トバヒトの変身がとけた。
『な、なんで……どういう……』
呆然とするトバヒト。
そんな彼の周囲を囲む、17番と、他にもいた魔王討伐隊のメンバーと、ラストローズ辺境伯。
自力で逃げるのは不可能と判断したトバヒトは、
『あ、アバターラさん! たすけてください! 変身時間が……聞いていたより短く――ぐぁあああ!』
アバターラに助けを求めるが、
そのスキをつかれ、
ラストローズ辺境伯に、背中を斬られた。
『まさか、あなたが、アバターラとグルだったとは……あなたが悪人なのは知っていたが、そこまでとは、流石に思っていなかったよ、トバヒト子爵』
『う、うぅう……く、くそ……なんで……50分が……リミットのはずで……まだ……30分しか……』
激痛と悔しさで涙を流すトバヒト子爵。
と、そこで、
『呼ばれて、飛び出て、ジャジャジャ、ジャーン!』
まるでヒーローのように、空から降ってきて、トバヒトの前に立つアバターラ。
『トバヒト……どうやら、お前が使うと、30分で効果が切れるらしい。俺が使った時は50分がリミットだったんだけどなぁ』
『た、助けにきてくれて、ありがとう! 本当にありがとう!』
全力で感謝を伝えてくるトバヒトを尻目に、
アバターラは、ラストローズ辺境伯に、
『俺の子分であるトバヒトの襲撃を防ぐとは、やるじゃないか。しかし、次はこう上手くいかんぞ。必ず、貴様の息の音を止めてやる。覚悟しておけ! ふはーはっはっは!』




