105話 メッセージ。
105話 メッセージ。
アバターラを利用して邪魔な奴らを一掃しようと企んでいるトバヒト。
この街にいる貴族は全員、
『ウチにアバターラがきませんように』と願っているのだが、
トバヒトだけは、
『なんとか接触して交渉できないだろうか』
と、ずっと考えていた。
ちなみに、トバヒトが、極悪貴族でありながら、今の今まで、アバターラの襲撃を受けなかった理由は一つ。
トバヒトが植物人間になって、魔王組を統制する者が一時的にでもいなくなったら、構成員が暴走することが考えられるため。
だから、トップのトバヒトはギリギリ許されていた。
――というか最後まで取っておかれた。
……そのことを、トバヒトは、アバターラからのメッセージだと『誤解』する。
(おそらく、アバターラも本質は『悪』。ラストローズやカルシーンは『アバターラは、悪党しか狙っていないので義賊を気取っている可能性がある』などとほざいていたが、違う。アバターラは義賊を気取っているのではない。邪魔なゴミを排除しているだけだ)
トバヒトの思考が加速していく。
(悪党だって人間だから、悪党が嫌いだ。それに『商売敵(悪事で飯を食べている人間)』の数は少なければ少ないほどいい)
もし、オレオレ詐欺をする人間の数が『一人だけ』だったら、
社会的かつ大々的に対策されることがなくなるため、
永遠に、稼ぎ続けることができるだろう。
悪党の最大の敵は、いつだって、同業者。
(そして『捜査される側の立場』でモノを考えれば『優良な人間を狙う者よりも悪党狙う者の方が、追求の手を緩めやすい』という結論になるだろう。――以上のことから、アバターラは『狡猾な悪である』と断定できる。そして……『悪党は悪党が嫌い』だが『極めて有能な悪党』のことは求めて利用する傾向にある。……この私のように)
色々と悩んだ末、トバヒトは、
アバターラに対して、自分も『メッセージ』を送る事にした。
『ここに、貴様が求めている有能な悪がいる。会いにこい。――仲間(賊)になろう』
――という意味を込めて、トバヒトは、手持ちの鉄砲玉をすべて使って、
ヤクザを大量に殺しまくった。
そのことで、14番と8番の怒りを買ったが、
アバターラと交渉できるなら、その程度は安い買い物。
殺したのはヤクザだけではない。
実は、裏で悪徳貴族も殺しまくった。
ヤクザ殺しは『トバヒトが主犯だ』と分かるように。
悪徳貴族殺しは『主犯』が誰か分からないように。
巧妙に狡猾に邪悪に凄惨に。
『己の悪』の『精度』と『純度』を、
分かる者だけに香るように。
センエース日本編、連載開始しております。下のリンクから飛べます。読んでもらえたら嬉しいです! ここまで、ずっと、センエース神話を追い続けてくれた全ての読者様へ。心から感謝を!!




