98話 ウィトゲンシュタインのアトリエ。
98話 ウィトゲンシュタインのアトリエ。
『表向きの工房』をつくることも忘れない。
ダンジョン神器である『ウィトゲンシュタインのアトリエ』の存在がバレるわけにはいかないから。
表で普通に生産業に勤しんでいるとみせかけ、
『裏』では、ウィトゲンシュタインで、高位のアイテムを作成していく。
『牡蛎の10番』は、虚弱体質で、戦闘では役に立たないが、アイテム制作においては、人知を超えた神業を有していた。
こうして、17番は、高性能の武器や防具を大量につくらせては、
『ヘルズ覇鬼の襲来に怯えているエリア』に高値で売りさばく……
という、常軌を逸した『死の商人』ぶりを世界に魅せつけていく。
――企業面接なんかで、たまに『このボールペンを1万で私に売ってください』という問題が出たりするが、その絶対的な答えは一つ。
『そいつがボールペンを買わないと死ぬ状況を創り出す』ということ。
そうすれば、人は、1万どころか、100万でも2億でも出す。
金は命より重いが、命もまた金より重いのだ。
★
『7日』の朝。
17番は、死の商人として、アホほど儲けていた。
実際に防衛効果も出ている。
17番が領主になってから、被害が激減。
たまに、魔王や、高位モンスターが都市内部に湧いて暴れるが、
『17番産の武具』のおかげで、どうにか対処することが出来ている。
……まあ、ぶっちゃけ、モンスターの『暴れ具合』は、『召喚主である17番次第』なのだが、都市内部の人間は、そんなこと、知る由もないので、普通に、
――『17番のおかげで、この都市の平和が守られている』
という認識になっている。
爆裂な成果をだしたことで、
パメラノコット公爵&ラストローズ辺境伯から呼び出しを受けた17番。
(褒められるのかな? それとも、怪しまれているのかな?)
と思いつつ、二人の元にいくと、
パメラノコットが、先陣を切って、
『まずは褒めておこう。ぬしのおかげで、各エリアの被害が、かなり抑えられておる』
『恐悦至極! 頑張った甲斐がありました!』
『しかし、いったい、どうやって、あれほどの武器防具を大量生産しておるのじゃ? 一つ作るだけでも、かなりの労力と金と人的資源を必要とするはずじゃが』
『はい。ボクは幼年期のころからずっと、平民鍛冶師ポルのもとで、鍛冶仕事に関わってきました。その際に、技術を盗むのはもちろんのこと、自分ならああするこうする、とずっと考えていました。そのアイディアを実行している感じです。具体的に言うと、まず、鋼の精製方法から工夫を始めました』




