97話 8月……2日……
97話 8月……2日……
『絶対の安全圏(ヘルズ覇鬼は、17番の召喚獣なので、いくらでもダメージコントロールが可能)』から、経費ゼロの『恩』をバラまく諸行に、謎の快感を覚え始める17番。
――ヘルズ覇鬼撃退の功績が認められて、出身である『外周西南西エリア7』の統治をまかされるようになった。
元々のエリア7の統治者だった『ウルベ』は、現在、植物人間になっているので、いないものとして扱われている。
仮に、『貴族になること』はできても、『統治を任される』……というのは、実際のところ、なかなか難しい。
だが、現状だと、アバターラの暴走で、貴族がたくさん植物人間になっており、手が足りないという事情もあるため、貴族になったばかりの元奴隷でも、統治を任されることになったのである。
17番の快進撃は止まらない。
17番は、まだまだ出世する。
★
『2日』の朝。
昨夜、アバターラが、ダンジョンで『ウィトゲンシュタインのアトリエ券(素材と技能しだいだが、神器を作成することも可能なアイテム工場)』を手に入れたことで、17番の、『都市内部での闘い方』が大幅に変わった。
これまでのように、モンスターをけしかけて、マッチポンプで知名度を上げる作戦はもうやめた。
――さっそく、裏ダンジョンゼノリカに、アトリエを設置。
ちなみに、『領地を任される』ということは、『その領地の予算を扱える』ということである。
17番は、さっそく、『与えられた予算』を使い、
各地方から『食えていない鍛冶屋(奴隷ふくめ)』を集めるだけ集めた。
ポルも、一応、面接してやった。
17番は、『全力で圧迫面接をした上で断る』という、とんでもないゲスな悪意をぶちかましてみせた。
そのことで『モンジン(センエース)』から、しっかりとお叱りを受けたが、それでも、やはり、ポルに対する感情だけは紳士でいられない様子。
何年も虐げられてきた復讐心は、そう簡単に鎮火しない。
『あのオッサンは、別に、ボクが仕事をあげなくても、余裕で食っていけるから不合格にしてもいいんだよ。ボクは、その点、マジで詳しいんだ。……あと、普通にキモすぎて、一緒に働くとか、生理的に無理。同じ空間にいるだけでゲロ吐いちゃう』
なんだかんだ、人集めも終わったところで、
アバターラの配下の一人である『牡蛎の10番(燕の5番の妹)』を鍛冶屋のリーダーへと据えた。
以降、せっせと、あらゆる方法を使って、『素材』を集めた。




