表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

579/5860

39話 ジャミとバロールの魂は、常に、神と共にある。


 39話 ジャミとバロールの魂は、常に、神と共にある。


 聖典を自分の手で完璧なものにしようか――などと、一瞬、考えはしたものの、

 しかし、バロールは、すぐに首を横にふって、


(いや、書き切れる気がしないな……きっと、おそらく、先人も、今の私と『同じような苦悩』を抱えながら書いたのだろう……今ならば、その苦しみが理解できる……主の耀きを書物になど、起こせようはずもなし。あの導き……この私を引っ張り上げた、あの光……)


 ――バロールは『届かなかった』が、しかし、彼の『中』に『神の教え』は根付いた。

 『道』はできた。

 『扉の開き方』はわかった。

 となれば、もはや時間の問題だった。


 バロールは思う。


(見えてはきている。まだ遠いが、遠すぎはしない)


 バロールが神になるためには、もうひとつ、大きなキッカケが必要。

 それは事実だが、しかし、逆に言えば、バロールは『そこまで』は、辿り着く事ができたのだ。


(私も、はやく辿りつきたい……あの果てなき輝きの御側に、少しでも近づきたい……少しでも強くなって、その御役にたちたい……私の全ては、この上なく尊い神のためにある……)


 辿り着いた滅私。

 豊かになった心。

 魂が神で満ちた。


 全てが輝いて見える。

 理解に届いた。

 命の使い方。

 全てが、神のため。


 圧倒的な幸福。

 高次の至福。


 ジャミとバロールの魂は、常に神と共にある。


 ――これらが、もし『実在しない神に対する想い』だったとしたら、ただのヤバい二人だが、彼らの魂を満たした神は実在する。


 『この世の全てを照らしてくれた命の王』は、彼らの『上』に、

 ――間違いなく存在するのだ。


 彼らの『上』にいるのは、『生命の祈り』を無視する神じゃない。

 『正しい世界が欲しい』という、『歪みを持たない者』が常にその胸に抱いている、純粋で無垢で、けれど、そのぶん『難易度が高い』――そんなクッソ重たい願いを、しかし、ガチでキチンと完璧に叶えてくれた至高の神。


 『正しさとはなんぞや』などという、永遠に答えの出ない『言葉遊び』・『禅問答』に溺れて悩むような、そんな下らないマネでお茶を濁すこともなく、ただひたすらに、かたっぱしから、不条理と不合理を殺し続けた神。


 どんな絶望を前にしても、勇気を叫び続けた命の王。

 『生命の最前線』という『地獄の底』で、

 誰よりもボロボロになって闘い続けた最強の神。

 ――この上なく尊い、神の王。


 ジャミが言う。



「あの美しさに、私は一歩……ほんの一歩だが、近づく事ができた。これまで弛まずに積み重ねてきたから届いた……私は自分が誇らしい」




 『遠き場所』に辿り着いたジャミ。

 恍惚の表情で神を語るジャミ。


 ――そんなジャミに対し、九華の第九席『レミングウェイ・カティ』は、

 三至の方々に対するモノと同等かそれ以上の敬意を抱いた。


 『辿り着いたジャミ』の美しさは、最果てに辿り着いているようにしか思えなかった。

 限界を超えて、超えて、超えた、先の先の先。

 カティからすれば、ジャミこそが神だった。


 絶対にして最強の神。

 三至でも、今のジャミには勝てないだろうと思う。


 しかし……というか、だからこそ、


(何度聞いても、嘘臭いなぁ……)


 と思ってしまう。

 カティからすれば、『最強の神』であるジャミを、

 導いて、開いて、その上で、赤子扱いしたという、あまりにも超越的すぎる存在。


 ――そんなもの、いるはずがない。

 『当たり前の常識』が、カティを盲目にする。


 ジャミが語る神は、あまりにも壮大かつ神々しすぎて、信用する事など到底できなかった。


 これは、もはや、仕方がない話だった。

 ここまでくると、カティが悪いとは言えない。

 神は、あまりにも偉大すぎる。

 その威光の強度は、直接触れた者にしか伝わらない。

 それだけの話なのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ