95話 運命の31日?
95話 運命の31日?
最後に一度だけ、セミディアベル公爵の皮肉に、反撃してみた17番だったが、
特殊な『サイコ』で返されてしまい、あえなく撃沈。
17番は、この時、『もう二度と、この人とは喋りたくないな』と心底から思った。
★
その日の夜、17番は、9番と、ささやかなお祝いをした。
『貴族への昇格、おめでとうございます、センパイ』
『9番も、そろそろ申請書が通って平民になるはずだ。少し早いけど、おめでとう』
『僕は何もしていませんよ。全部、センパイのおかげです。ありがとうございます!』
『平民で終わりじゃなく、いずれは、貴族にしてあげるよ。その方が楽に生きられるから』
『僕は、センパイと一緒にいられるなら、奴隷のままでも良かったですよ』
欲しい言葉を、ほしい時にくれる……
そんな9番のことを、17番は、とても大事に思った。
これからも、ずっと守り続けよう……と、そんな風に硬く決意をした。
★
『31日』の朝。
正式に貴族になった翌日、
17番は、『元主人』のポルに会いにいった。
『一般平民のポル』は、17番の顔を見ると、驚いて、
『ぉ、お前……』
『お前ぇ? おい、そこの『使えない家畜みたいな体型』をしたクソ庶民。誰に口をきいているんだ、ゴミ庶民。殺すぞ、カス庶民」
と、徹底的に貴族マウントをとっていく。
奴隷だった時代に、散々好き放題された恨みを、性根の腐った形で返していく17番。
17番の最近の活躍は、気にしていなくても耳に入るレベル。
『奴隷が貴族に成り上がること』は滅多にないので、
そのビッグニュースから目を背けることは難しい。
――と、そこで、17番は気づいた。
ポルの背後に、馴染みのない奴隷が一人いた。
『ザ・奴隷』という感じのやせこけた10歳ぐらいの少年。
17番は、かつての自分と重ね合わせつつ、
その奴隷に、
『そこの奴隷。……お前、このオッサンから殴られていないか? いや、聞くまでもないな。殴られているよな』
『ぇ、ぇと……』
ピシっとかたまる奴隷に、17番は、
『みなまで言わなくてもわかる。このオッサンの暴力はクセみたいなものだから。音を殺すのと同じぐらい、自然と、奴隷に手をあげてしまうんだ』
そこで、キっと、ポルを睨み、
『おい、そこの、腐った生ゴミみたいなツラした、キモクソ平民。……今後、一度でも、この奴隷に、暴力をふるったら、殺すからな。これは命令だ。歯向かってもいいけど……マジで殺すからな』
『……っ』
『定期的に、この奴隷に確認にくるからな。マジで覚悟しておけよ』




