93話 貴族昇格。
93話 貴族昇格。
『え、てことは、ボクは、もう、貴族に――』
『――という形にしたかったんだが、頭の固いパメラノコット公爵が、【それは問題がある】などと言ってきてねぇ。あの老婆は、本当に、人の邪魔しかしない。嫌いだよ』
『大丈夫ですか? 公爵に対して、そんな……』
『僕は無能なバカが大嫌いでね。向こうも、僕の事を嫌っているようだけれど、あれは、ただの嫉妬だ。誰よりも高潔で才気あふれる完璧な僕をねたんでいるんだ』
(自己肯定感の鬼……それだけ自分を愛せるのは、間違いなく才能だ)
『パメラノコット公爵だけではなく、セミディアベル公爵までも、君の昇格話に入ってきて……で、なんだかんだ話がこじれた結果……結局、その二人が一緒に、君の資質を確かめるということになってしまった。これから試験をするとのことだから、すぐに向かってくれ』
『えぇ……マジっすか。……ぇ、ボク、これから、二人の公爵にボコられるんすか?』
『あの二人が、平民相手に、本気で戦うわけがないだろう。あくまでも、君の資質を確かめるだけだ』
そんなこんなで貴族昇格試験を受けることになった17番。
★
ほとんど挨拶もなく始まった試験。
――あまりにも強すぎる二人に翻弄されて涙目の17番。
(資質を確かめるだけじゃないんかいっ! なんで、ボク、こんなボコボコに……ぐぇっ!)
約束と違い、掟破りのタコ殴りを受けた17番。
(その気になれば、魔王マパネットをフル稼働させて、この二人を殺す事も可能だけど、何の恨みもないのに殺すワケにはいかな……ぁ、いや、現在進行形で『ボコられた恨み』は出来上がっているか。……どうしよう……殺そうかな……)
などと、心の中で毒を吐きつつも、
流石に、『この都市の政治の中枢を担っている公爵二人』を殺すわけにもいかず、
ひたすら、『二人からの攻撃に耐えるダルマ』に徹する17番。
無抵抗を望まれているわけではないので、要所、要所で、『ワンダーナイトに変身させたマパネット』のカウンターを振らせている。
グっと踏み込んでの切り込み。
……が、『存在値60台の力』にチューニングしているマパネットの攻撃が当たるような二人ではない。
サクサクと避けられてしまう。
パメラノコットは、一度だけ、明らかにあえて避けず、マパネットの攻撃を左腕で受け止めていた。
……が、ワンダーナイトの剣には、特に麻痺効果をつけているわけでもない。
だから、パメラノコットは、『特別な力は何も感じないなぁ』という顔で首をかしげるばかり。




