92話 28日、29日、30日。
92話 28日、29日、30日。
『28日』の昼。
明確に『ラストローズ辺境伯に怪しまれている』と感じた17番は、
アバターラと相談して、だいぶ大きな芝居を打つことにした。
一言で言えば『アバターラが、ラストローズ辺境伯を襲い、そこを、17番が助けに入る』という、古典のナンパみたいな作戦。
作戦自体は、アホの極みみたいだが、
ナンパの相手が、『ラストローズ辺境伯』なので、
安い演技では、むしろ墓穴を掘るはめになってしまう。
やるなら徹底的に……
ということで、
――この作戦中に、17番は生死の境を、バチコリさまようことになった。
アバターラに殺されそうになったラストローズ辺境伯を庇い、
17番の心臓に風穴があくという大事故に発展。
余裕で死ねる大ケガだが、同行していた『回復魔法の名手カルシーン伯爵』が、死ぬ気で回復魔法をかけたため、17番は、どうにか、一命をとりとめることができた。
あまりにマジすぎる瀕死の重傷ぶりを目の当りにして、流石に、本気で心配してしまうラストローズ辺境伯。
どんどん分からなくなって、思考の迷路にはまる。
何が真実なのか、もう、ラストローズには分からない。
★
『29日』の午後。
この日も、アバターラは、各地で大暴れ。
ほかの討伐メンバーが、のきなみボコボコにされていく中、
17番だけは、『魔王特効の力を持つ狂気のワンダーナイト』を使って、
どうにか、残虐非道の殺戮テロリスト『魔王使いのアバターラ』を退けていく。
流石に、功績を認めざるをえないということで、17番が表彰されたりもした。
ボーナスとして1000万ほどが支給されたりもした。
討伐隊内での実質的な地位もあがっていく。
当然、給料もあがる。
――それを機に、『自分のサポーターとして雇う』という形で『9番』に仕事をあたえて平民にしたりもした。
平民昇格の申請書が通りやすくなるよう、
ラストローズ辺境伯への根回しも忘れない。
気づいた時には、事実として、17番は、魔王討伐隊のエースになっており、
アバターラ討伐の報奨金は、35億にまで上がっていた。
★
『30日』の午後。
この日、17番は、ゼンドートから、貴族昇格の話を持ち掛けられた。
『貴族になるためには平民ランクがS5であることと、数千万を超える潤沢な資産と、勲章級の功績が必要で、かつ、それなりに難易度の高い実地試験を受ける必要がある。君の場合は、全てを満たしているし、試験に関しては、魔王討伐隊試験の合格を適応させるということで免除になった』




